古代エジプト。探偵役は三日間だけ現世に戻れるミイラ……異常設定もここまで来たか。
現役のマネックス証券の取締役が執筆した作品。主人公が二人いる、という構造はなかなか考えてある。ミイラが死の世界を渇望しているあたり、この時代のこの場所でしか成立しないお話でもある。このミス大賞納得。
大倉崇裕の最大の特徴は、とにかく小説のネタに徹底的に淫していることだと思う。動物にしても(いきもの係シリーズ)、怪獣(笑)にしても(「警視庁怪獣捜査官」「スーツアクター探偵の事件簿」は面白かった)対象への思い入れがすごい。
これは山岳に関しても言えることで、山登りが好きな大倉崇裕の本領が発揮されたのがこのミステリだ。山小屋にバイトに来た女性が遭遇する日常の謎が読ませる。短いなかでもきちんとオチをつけるあたり、さすがだなあ。
にしても、わたし山と渓谷社の本を読んだのって生まれて初めてです。山とは無縁の人生でしたから……
懸賞金ハンターであるコルター・ショウのシリーズは、最初はどうなることかと思ったが、どんどん面白くなっている。家族のいろんなことから解放されたのが奏功したのでは?
どんでん返しがお得意のディーヴァーだけど、そう思いながら読んでもまたしてもだまされ、そしてそれが快感。今回のこのひっかけに気づける人はよほど……ひねくれているんだと思います(笑)
死後に大ベストセラーとなったスティーグ・ラーソンの3部作はとんでもなく面白かった。
その後を継いだダヴィド・ラーゲルクランツの3部作も健闘していた。もっとも、ダヴィドは執筆に疲れ果て、鬱病を発症してしまったのだけれど。
さあ新シリーズの開始だ。おなじみのリスベットとミカエルが登場し……あれ?ほとんどワクワクさせてくれないのだ。いったいどうしたことだろう。次作に期待したいところだけど、はて。
法医昆虫学捜査官シリーズ、「よろずのことに気をつけよ」の川瀬七緒が、「よろず~」につづいて民俗学をテーマにしている。それに加えて、介護問題もからむ。主役は民俗学を研究する女子大生。彼女は認知症グループホームでリサーチを始めるが、ある老女がつぶやいた「おろんくち」という言葉にひっかかる……
川瀬作品のヒロインは、みんな空気が読めずに暴走しがち。この女子大生もそうだ。ただし、介護現場にふれることで、人間的に成長していくあたりは新味。
「名探偵のはらわた」「名探偵のいけにえ」などでわかっていたつもりだったけれど、今回はグロさがパワーアップしています。人間が簡単に爆発し、内臓が飛び出てくる。しかもラストでは……
「ねえ、どうしてこの本を買ったの?」と司書に。
そうです。うちの中学の図書室にあったんです。
「いやーなんか面白そうなんで(笑)」
「うん、まあこういうのが好きな中学生もいるかもね」
まあ少ないとは思いますが。
量子力学をからめて、展開はまことに複雑。でも伊坂幸太郎が推薦するように、きちんとしたミステリになっている(んでしょう。途中で検証は放棄しました)。それにしてもめんどくさいことを考える人もいたものだ。
まったく知らない作家だったけど、タイトルに魅かれて借りる。さすが檀徒総代長(笑)。それにしたって戒名探偵ってフレーズはすごい。最初の文字を除けば名探偵であるあたりも気が利いている。
で、これが意外な面白さだったのだ。檀徒総代じゃなくても、仏教徒ですらなくても、面白いですよきっとあなたにも。
1作目を読んでいないので最初からそうだったのかはわからないが、タイトルどおりフェミニズムが前面に押し出された短篇集。
ブラック・ショーマンとは、かつてアメリカでも活躍したマジシャン。いまは日本で小さなバーを営んでいる。彼のもとに、さまざまなトラブルをかかえた女性たちが現れ……
世知に長け、鋭い洞察力をもつ年長者と、純粋で年若い女性のコンビ、とくれば北村薫の「円紫さんと私」シリーズや「中野のお父さん」を連想させるが、こちらはもっとダークな味わい。なるほどブラックだ。
にしても東野圭吾はやっぱりさすがだなあと思う。これほど読ませるミステリはなかなか。
で、ベストセラーになっている1作目も読んだんですけど、やはり2作目の方が。なぜ映像化されていないのかが不思議。されるとすればショーマンは西島秀俊か木村拓哉しか考えられない。阿部寛と福山雅治はもう使ってるわけだし。意表をついて大泉洋ってか。