事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「冬季限定ボンボンショコラ事件」米澤穂信著 創元推理文庫

2024-12-08 | ミステリ

小市民シリーズ最新作。15年ぶりの長篇。これで季節はひとめぐり。「春季限定いちごタルト事件」から20年かあ。

今回は小鳩くんがクルマにひかれてしまう怒涛のオープニング。そして彼が中学生のときに、ある事情で小市民をめざすことになった経緯が語られる。

小鳩くんと小佐内さんの会話はいつものように緊張感をはらんでいてすばらしい。はたして大学生編に続くのだろうか。いずれにしても、小市民シリーズと古典部シリーズの両輪があるかぎり、米澤穂信の存在は絶対的だ。

 

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「体育館の殺人」「水族館の殺人」「図書館の殺人」青崎有吾著 東京創元社

2024-11-13 | ミステリ

地雷グリコ」で大化けした青崎有吾の初期の「館シリーズ」を一気読み。それぞれの場所で起こる殺人事件を、文化部室に居住する、性格最悪・勤労意欲ゼロ・(オタク系グッズを買うための)金銭欲だけはあるという高校生、裏染天馬が探偵役。

限られた容疑者のなかから、徹底的に理詰めで犯人をしぼりこんでいく過程がすばらしい。くどすぎますけど。

でも動機の部分がなあ、どの作品もそこがちょっと……面白いですけどね。

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「ファラオの密室」白川尚史著 宝島社

2024-11-05 | ミステリ

古代エジプト。探偵役は三日間だけ現世に戻れるミイラ……異常設定もここまで来たか。

現役のマネックス証券の取締役が執筆した作品。主人公が二人いる、という構造はなかなか考えてある。ミイラが死の世界を渇望しているあたり、この時代のこの場所でしか成立しないお話でもある。このミス大賞納得。

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「琴乃木山荘の不思議事件簿」大倉崇裕著 山と渓谷社

2024-10-31 | ミステリ

大倉崇裕の最大の特徴は、とにかく小説のネタに徹底的に淫していることだと思う。動物にしても(いきもの係シリーズ)、怪獣(笑)にしても(「警視庁怪獣捜査官」「スーツアクター探偵の事件簿」は面白かった)対象への思い入れがすごい。

これは山岳に関しても言えることで、山登りが好きな大倉崇裕の本領が発揮されたのがこのミステリだ。山小屋にバイトに来た女性が遭遇する日常の謎が読ませる。短いなかでもきちんとオチをつけるあたり、さすがだなあ。

にしても、わたし山と渓谷社の本を読んだのって生まれて初めてです。山とは無縁の人生でしたから……

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「ハンティング・タイム」Hunthig Time ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋

2024-10-25 | ミステリ

懸賞金ハンターであるコルター・ショウのシリーズは、最初はどうなることかと思ったが、どんどん面白くなっている。家族のいろんなことから解放されたのが奏功したのでは?

どんでん返しがお得意のディーヴァーだけど、そう思いながら読んでもまたしてもだまされ、そしてそれが快感。今回のこのひっかけに気づける人はよほど……ひねくれているんだと思います(笑)

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「ミレニアム7 鉤爪に捕らわれた女」カーリン・スミルノフ著 早川書房

2024-10-24 | ミステリ

死後に大ベストセラーとなったスティーグ・ラーソンの3部作はとんでもなく面白かった。

その後を継いだダヴィド・ラーゲルクランツの3部作も健闘していた。もっとも、ダヴィドは執筆に疲れ果て、鬱病を発症してしまったのだけれど。

さあ新シリーズの開始だ。おなじみのリスベットとミカエルが登場し……あれ?ほとんどワクワクさせてくれないのだ。いったいどうしたことだろう。次作に期待したいところだけど、はて。

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「フォークロアの鍵」川瀬七緖著 講談社

2024-10-23 | ミステリ

法医昆虫学捜査官シリーズ、「よろずのことに気をつけよ」の川瀬七緒が、「よろず~」につづいて民俗学をテーマにしている。それに加えて、介護問題もからむ。主役は民俗学を研究する女子大生。彼女は認知症グループホームでリサーチを始めるが、ある老女がつぶやいた「おろんくち」という言葉にひっかかる……

川瀬作品のヒロインは、みんな空気が読めずに暴走しがち。この女子大生もそうだ。ただし、介護現場にふれることで、人間的に成長していくあたりは新味。

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「エレファントヘッド」白井智之著 KADOKAWA

2024-10-13 | ミステリ

「名探偵のはらわた」「名探偵のいけにえ」などでわかっていたつもりだったけれど、今回はグロさがパワーアップしています。人間が簡単に爆発し、内臓が飛び出てくる。しかもラストでは……

「ねえ、どうしてこの本を買ったの?」と司書に。

そうです。うちの中学の図書室にあったんです。

「いやーなんか面白そうなんで(笑)」

「うん、まあこういうのが好きな中学生もいるかもね」

まあ少ないとは思いますが。

量子力学をからめて、展開はまことに複雑。でも伊坂幸太郎が推薦するように、きちんとしたミステリになっている(んでしょう。途中で検証は放棄しました)。それにしてもめんどくさいことを考える人もいたものだ。

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「戒名探偵 卒塔婆くん」高殿 円著 角川書店

2024-09-04 | ミステリ

まったく知らない作家だったけど、タイトルに魅かれて借りる。さすが檀徒総代長(笑)。それにしたって戒名探偵ってフレーズはすごい。最初の文字を除けば名探偵であるあたりも気が利いている。

で、これが意外な面白さだったのだ。檀徒総代じゃなくても、仏教徒ですらなくても、面白いですよきっとあなたにも。

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「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」東野圭吾著 光文社

2024-08-15 | ミステリ

1作目を読んでいないので最初からそうだったのかはわからないが、タイトルどおりフェミニズムが前面に押し出された短篇集。

ブラック・ショーマンとは、かつてアメリカでも活躍したマジシャン。いまは日本で小さなバーを営んでいる。彼のもとに、さまざまなトラブルをかかえた女性たちが現れ……

世知に長け、鋭い洞察力をもつ年長者と、純粋で年若い女性のコンビ、とくれば北村薫の「円紫さんと私」シリーズや「中野のお父さん」を連想させるが、こちらはもっとダークな味わい。なるほどブラックだ。

にしても東野圭吾はやっぱりさすがだなあと思う。これほど読ませるミステリはなかなか。

で、ベストセラーになっている1作目も読んだんですけど、やはり2作目の方が。なぜ映像化されていないのかが不思議。されるとすればショーマンは西島秀俊か木村拓哉しか考えられない。阿部寛と福山雅治はもう使ってるわけだし。意表をついて大泉洋ってか。

 

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