2010年6月号「PK戦」はこちら。
友人、知人の皆様、つかこうへいでございます。
思えば恥の多い人生でございました。
先に逝くものは、後に残る人を煩(わずら)わせてはならないと思っています。
私には信仰する宗教もありませんし、戒名も墓も作ろうとは思っておりません。
通夜、葬儀、お別れの会等も一切遠慮させて頂きます。
しばらくしたら、娘に日本と韓国の間、対馬海峡あたりで散骨してもらおうと思っています。
今までの過分なる御厚意、本当にありがとうございます。
2010年 1月1日 つかこうへい
……「熱海殺人事件」「初級革命講座 飛龍伝」などで一世を風靡した劇作家、「蒲田行進曲」で直木賞をゲットした小説家、風間杜夫・平田満を世に送り出し、阿部寛・黒木メイサたちを演技開眼させた演出家、「娘に語る祖国」でカミングアウトした在日韓国人……つかこうへいにはさまざまな顔があり、それぞれに素晴らしい仕事を見せている。
しかし忘れちゃいないだろうか。彼は「つかへい腹黒日記」(角川書店)で読者をひたすら笑わせた劇薬のようなエッセイストでもあったはず(あ、時期は微妙だけど前妻つながりで松田優作とは兄弟でもあったのか)。
微温的なエッセイという世界に、思いっきりデフォルメしたキャラをぶちこみ(アタッシェケースに現金をつめこみ「金で解決できることなら」とうそぶくどMな角川の編集者……いまをときめく幻冬舎の見城徹社長)、露悪の極致とばかりにブスや貧乏人を罵倒しつくしたあの名作を忘れてはなるまい。
「これだけ節税できました」と得々と語る税理士に「そんなことは頼んでねーっ!」と蹴りを入れる劇作家……本人がいちばんデフォルメされてました。影響受けたなあ。合掌。
「昔の自分に嫉妬しちゃうときって、ないですか」
松本隆に向かって松任谷由実(この場合は呉田軽穂)がしみじみと。アーティストの業(ごう)ですかねぇ。
2010年8月号「不適切な指導」につづく。