事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「新解釈・三國志」(2020 東宝=日本テレビ)

2021-05-31 | 邦画

新解釈・日本史」のあのノリで、あの三國志を映画で描こうという無謀な企画は、福田雄一が「今日から俺は!」(やはり日テレ、やはり東宝)を大ヒットさせたごほうびなんだと思います。

彼の作品の特徴はもちろん口調にあるわけで

「っていうかぁ」

「え?」

「いや言ってない」

「言ったよね。確実に言ったよね」

的なやりとりにどう感じるかが評価の分かれ目。批評家からはそれはもうボロクソに言われているし、劇場で観た知人たちも首をかしげている。

でもうちの奥さんは大喜び。変わった人だからなあ。

劉備(大泉洋)がだらしなくて諸葛孔明(ムロツヨシ)の奥さん(橋本環奈)が賢夫人、そして曹操(小栗旬)が思い切り女好きであるあたりの設定は、とても自然に感じられる。だってわたしは酒見賢一の「泣き虫弱虫諸葛孔明」の大ファンだから。

むしろどうしてもっと極端な設定に持って行かなかったのかなとすら。関羽と張飛の化け物のような強さを画面で炸裂させたら壮快だったろうに。

これまでの福田作品で、あの口調がぴったりなのは第一にムロツヨシと佐藤二朗。そして小栗旬や山田孝之がつづく。大泉洋はそこんとこちょっと及ばなくって(構えが大きい作品なので少しだけシリアスなところも見せなければならなかったあたりには同情しますけど)、退屈な印象はそのせいもあったかもしれない。

わたしとしてはめげずに福田雄一版「新解釈・始皇帝」をやっても……「キングダム」の面々が怒るな(笑)。橋本環奈は今回も魅力的でした。

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今月の名言2021年5月号PART3 忖度ワクチン

2021-05-31 | ニュース

PART2「ワクチンスタンピード」はこちら

「(ワクチンを所管する)厚労省からの電話なら分かるが、総務省からとは驚きである」

太田市の清水聖義市長が広報のコラムで明かした総務省交付税課長の会話。7月末までに高齢者のワクチン接種を終えてくださいよとリクエストされたとか。

この時点で医療従事者への接種も終えていないし、ワクチンの配布予定も明らかになっていないにもかかわらず。

他の自治体でも、7月末に終了予定という回答だけはしろと迫られたところがあったらしい。例によって役人の忖度開始。総務省は現首相の力の源泉だしね。だいたい、総務大臣自身が7月末は一種の努力目標みたいなものとコメントしているんだから笑える。

なんかもう、この国のコロナ対策に知見とか科学的態度とかを期待するのは無理なのかなあ。現政権の支持率浮揚手段がワクチンしかないにしても、ちょっといくらなんでも。

PART4「現場の意見」につづく

本日の1冊は「殺し屋、続けてます」文藝春秋 石持浅海は相変わらず続けてます。うれしい。

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青天を衝け 第十六回 恩人暗殺

2021-05-30 | 大河ドラマ

第十五回「篤太夫、薩摩潜入」はこちら

うーん、日本史知らずの人間にとっていちばんきつい話かも。天狗党です。極右の暴乱だと切り捨てていいのかさっぱり。

吉村昭さんの「天狗争乱」は読んだけれどそのあたりがよくわからない。このドラマで言えば、天狗党がひたすらに思慕した徳川斉昭(竹中直人)の息子にとってしんどいことは子どもでもわかる道理。で、その道理がわからない徒党だから平岡円史郎(堤真一)を暗殺するという経緯だったように描かれている。

つくづく思う。もしも吉村昭さんによって「天狗争乱」が書かれていなかったら、そして子母沢寛によって新選組が掘り起こされていなかったら、そして司馬遼太郎の竜馬がゆくによって坂本龍馬が無名のままになっていなかったとしたら?

これら先人の作品の上に今回のお話は成り立っている。もちろん、どの作品も平岡円史郎という存在を注視していなかった。そういうこともなければ大森美香さんだって脚本を書くモチベーションを保てなかったでしょう。平岡の退場はすばらしい回に昇華していました。

この大河の前半を堤真一が背負っていたことは疑いない。「西郷どん」で西郷隆盛役をきっちり断っていた彼が、大阪出身なのに究極の江戸っ子を演じて見せたのはさすがだと思う。にしても今回の暗殺は早すぎなかったかなあ。凄腕の家臣だった波岡一喜の無念には泣かされたけれども。

問題は、自分の家臣と言って差し支えない水戸藩の人間によって腹心が殺された慶喜(草彅剛)の気持ち。このあたりはほんとわかんないんですよ。もうちょっとお勉強しなきゃいけないんですかね。次回は木村佳乃の大芝居に期待。

第十七回「篤太夫、涙の帰京」につづく

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今月の名言2021年5月号PART2 ワクチンスタンピード

2021-05-30 | ニュース

PART1「業界の人たち」はこちら

「人権を侵害するような私刑は日本で見られなかっただけに、戦時中を想起させる出来事でショックでした。社会全体がピリピリしている裏返しだとも感じます。今の日本は政府に苛立ちを隠せない人たちと、政府を支持する人たちの間の溝が深い。今回のワクチン接種も、摂取しない人を過剰に攻撃するようなことは絶対に許されない。マスコミも社会が分断しないように発信する責任があると思います」

某新聞記者が自粛警察などの動きを嘆じて。わたしも、営業時間の短縮に応じているかを役所の人間が見まわっている状況に、これが21世紀の光景かと慄然とした。

もちろん、ワクチン接種が社会全体で進むことで感染症のリスクが減じていく理屈はわかる。しかしだからと言って、当初の

「ワクチンって、副作用が怖い」

という世間の評価が(同じサイドエフェクトの意味なのに、薬ではなくてワクチンだから副作用じゃなくて副反応と使い分けるあたり、姑息な感じ)、一気にワクチン礼賛に変わり、みんな必死で予約をとろうとしている現状って、なんかもうほんとまたしても日本人のスタンピード(暴走)が始まったかと……。

PART3「忖度ワクチン」につづく

本日の1冊は木皿泉「ぱくりぱくられし」紀伊国屋書店。名言のつるべ打ち。ちょっと多すぎます(笑)

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「残照 アリスの国の墓誌」辻真先著 東京創元社

2021-05-29 | ミステリ

多作&速書きで知られる辻真先さんはたくさんのシリーズものを書いている。その、キャラのオールスター的な存在が新宿ゴールデン街のスナック「蟻巣(アリス)」ものだとか。「たかが殺人じゃないか」「深夜の博覧会」で名探偵をつとめた(つとめさせられた)那珂一兵も登場します。

しかしタイトルが示すようにこれはシリーズの最終作となっていて、だから那珂一兵がどのようにして退場するかのお話を読んでしまうことになった。

復員してきた若き一兵は、姉とともに祖母の遺体を発見する。その遺体の上には那珂家の墓石がおおいかぶさっていた。犯人はいったいどうやって墓地から墓石を運び、わざわざ二階の殺害現場まで引き上げたのか。そしてなぜそんなことをしたのか。

もうひとつの事件は、一兵が漫画家として成功し、テレビ局がアニメ化しようとしていたときに起こる。一兵の姉が身体を引き裂かれて殺され、現場の密室のなかにはプロデューサーの毒殺死体も……

ネタバレになるので詳しくは明かせないけれども、最初の事件は高木彬光の某有名ミステリのトリックのバリエーションだし、あとの方も島田荘司もっと残虐にやってます。で、読者が気づくに違いないという前提で書かれている。

だからこの作品のキモはトリックよりも動機や事件の背景を描くことにあったのだろう。不在の名探偵の行動を、スナックの常連客が推理するという体裁がすばらしい。

そして、那珂一兵が成功した漫画家という設定を生かし、辻真先さんが駆け抜けたアニメ業界を描き切ることに主眼があったのだと思う。それはみごとな戦中戦後の芸能史でもある。

そして、作者のあとがきに驚愕の事実が。那珂一兵のモデルって、あの超有名漫画家だったとはっ!

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今月の名言2021年5月号PART1 業界の人たち

2021-05-28 | ニュース

4月号PART4「どうなっちょるの」はこちら

「新型コロナの影響で暴力団の会合が減っており、暴力団に関する情報収集に影響が出ている」

警視庁組織犯罪対策部捜査員のつぶやき。新型コロナウイルス感染症による影響は多くの業界に及んでいるが、反社会的勢力、および彼らを取り締まる側にもそれは顕著だ。鑑識の作業は命がけになっているし、警視庁(つまりは東京都警察本部)の人間が他県に出張するのも歓迎されていない。

やくざに至っては、飲食業が自粛を求められていることもあってみかじめ料が激減。おまけに、高齢の人間が多く(ですって)、長いこと酒やクスリを摂取してきたために基礎疾患が多いことからコロナの影響は大きい。

刺青を入れているので感染症リスクは高く、肝臓はへたり、皮膚呼吸障害で内臓は弱っていて……なんでも、当事者にならないとわからないことってあります。

PART2「ワクチンスタンピード」につづく

本日の1冊は「ヘンな科学 イグノーベル賞40講」五十嵐杏南著 総合法令出版
ユーモアあふれる研究に送られるイグノーベル賞だけに、受賞者のスピーチもすばらしい。ブラジャー型のガスマスクを発明したエレナ・ボドナー博士のスピーチには笑った。

「みなさん、女性に胸が2つあるって、本当にすばらしいことではありませんか。わたしたち女性は自分の命だけでなく、選んだ男性も救うことができるのです。この保護装置を使うには、平均で25秒しかかかりません。5秒で装着し、20秒でどのラッキーな男性を救うか悩むのです」

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「死亡通知書 暗黒者」 周 浩暉著 ハヤカワ・ポケット・ミステリ

2021-05-27 | ミステリ

前にも言ったように、この10年でいちばん面白かったミステリは陳浩基の「13・67」だ。SFで圧倒的だったのは「三体」。華文おそるべし、という思い込みがあったので、前は簡単にスルーしていた図書館の中国文学の棚をよくチェックするようになった。

で、見つけたのがこれ。読み始めて……おわあああ、面白いにもほどがある!小さな謎、大きな謎に名探偵が連続して挑む。ちょっとネタバレになるけれど、13人の護衛がついた人物をどのようにして拉致するか(→14人以上で事に当たる)など、思わず大笑いしてしまいました。

こんな高レベルな作品が中国にはゴロゴロしているとすれば怖ろしい。おや、このミスでしっかり4位にランクインしているのでした。ホッとして、しかしちょっと残念でもある。だってこの圧倒的なミステリの続篇が訳されるのを延々と待たなくてはならないんだから。

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「BG 身辺警護人 第1章」(2018 テレビ朝日)

2021-05-26 | テレビ番組

シーズン1をようやく見終えたばかりの感想です。

キムタクといえばフジテレビとTBSの占有物のような印象が強かったけれども、オトナの事情もありつつテレビ朝日とも組むことになった。オトナじゃないからそのあたりは詳しくないんですけど。

テレ朝としては失敗は許されないからキムタクとのコンビが多い井上由美子さんを脚本に起用。わたしにとって彼女とキムタクといえば「ギフト」だし、井上さんの最高傑作は高村薫原作の「照柿」でしょ。

さて、そんな鉄板なBGだったけれど、どうも最初は調子が出てなかった。作り手も「あ、こりゃちょっと違うな」と感じていたのだろう。テイストをコメディっぽく変えてきて、これが奏功した。後半はすごく面白いです。

このシフトチェンジがあったからこそ、別れた妻役で山口智子が登場するという驚きの設定がむしろ生きたし、最終話であの人が出るのも自然に思える。こりゃ、シーズン2も見なくっちゃ。

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山口雅也二冊

2021-05-26 | ミステリ

◇「落語魅捨理全集 坊主の愉しみ」講談社

◇「ミッドナイツ」講談社

おっといきなり山口雅也の新作が二冊も。山口さん今までなにやってたんですかあ……あ、大病なさってたんですか。失礼しました。

「坊主の愉しみ」は、古典落語とミステリを融合させるという粋な短編集。「ミッドナイツ」は80年代に彼がどうやって業界を生き延びたかが理解できる作品集だ。「生ける屍の夜」以降、彼が東京創元社と次第に離反していった事情が語られていて納得。

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開店閉店 やきとり篇

2021-05-25 | ニュース

日の出町篇はこちら

駅前の庄内藩の閉店はやはりさみしい。焼き鳥店とはいいながら、魚などが本当においしかった。まさかこの店名にするために酒井家の了承までとっていたとは思いませんでしたが。

そのかわりに、というわけではありませんが新橋5丁目にテイクアウト専門の焼き鳥店が開店。その名も「五鳥目(ごちょうめ)」。ここまでひっぱっといてなんですが、わたしは興味ありません。だってチキンが食べられない人間ですから。

……と事務だよりに特集したその晩のおかずは妻が五鳥目から買ってきたヤキトリでした。もちろんチキンじゃないやつね。

本日の1冊は冲方丁の「麒麟児」角川書店。ここに描かれた勝海舟を、わたしは好きになることができない。

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