事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言 2014年12月号 賭場(とば)

2014-12-31 | 社会・経済

2014年11月号その2「劇的に失敗する政治」はこちら

「カジノによって景気浮揚や経済の活性化を!と言うこと自体が、すでに博打になっていることにどうして気づかないのだろうか?」

小野田正利大阪大学大学院教授の「モンスター・ペアレント論を超えて」のためにわたしは内外教育を愛読しつづけているようなもの。カジノ誘致に動く政治家たちの心性を批判している。これはまったくな話で、すでにしてマーケットという名の賭場に屈服しつづける政治を象徴している。読み終えたばかりの黒川博行「破門」にはこんなくだりも。

先進国でカジノがないのは日本だけだろう、と桑原はいう。
「けど、日本にはパチンコという博打産業がありますよね。そこらの年寄りやおばちゃんが歩いて行けるところに博打場があるような国は日本だけでしょ」
「パチンコは警察と極道と腐れ議員の米櫃(こめびつ)や。下手に手を出したらやばい」
「どこかの知事がカジノ構想を打ち上げてもあきませんか」
「知事もあほやない。本気で米櫃に手を突っ込む肚はない」
桑原はしたり顔で「わしが知事やったら警察と組む。税金でカジノを作ってアガリは山分けや」


……腐れ議員がいかに多いかと嘆息。

「それで、あの日……カーテンコールのとき、ぽつんと空いているその椅子を見たときに、どうしてもあふれるものがあって。わたしのその瞬間を見た可南子さんが、楽屋に来てくださった。」

『ほぼ日刊イトイ新聞』における宮沢りえと糸井重里の対談から。りえママの死に動揺するりえを、同じ女優として樋口可南子はなにごとか察し、楽屋で抱き合ったのだとか。女優は、女優を知るですね。大女優への道を駆け上る彼女は今月名言が多かった。

宮沢「わたし中卒じゃないですか。」
糸井「中卒といえば、赤塚不二夫と宮沢りえ。」
宮沢「それはちょっとうれしいな(笑)。」

もうひとつ。

「私たち“元祖小室ファミリー”なんだよね」

ヨルタモリに出演した観月ありさと。そういえば宮沢りえの「ドリームラッシュ」は小室哲哉の作品でした。人に歴史あり。それではみなさん、よいお年を。

2015年1月号「5000円から」につづく

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「トゥモロー・ワールド」 Children of Men (2006 ユニバーサル)

2014-12-30 | 洋画

ごひいきP.D.ジェイムズの「人類の子供たち」の映画化。

なぜか世界中で子どもが生まれなくなる。そのため、世の中は徹底的に荒廃する。なにしろ、未来がないのだから。

これもひとつの正解ではあるだろうが、星新一のショートショートには、別の「子どもが生まれない世界」が展開されていた。歴史のすべてが最後の世代に奉仕するかのように、これまでの財産を彼らは消費し続ける。なにしろ、生産する必要がないのだから。一種のユートピア。

果たして実際にはどうなるのだろう。少子化がすすむ日本においては、まるっきり空想の世界というわけではない。
十八年ぶりに聞こえる赤ん坊の声に、銃声が止むあたりの描写には、わかっていても感動する。文字通り、神の子の誕生だ。

監督は「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン。主演はクライブ・オーウェンとジュリアン・ムーア。

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「後妻業」 黒川博行著 文藝春秋

2014-12-29 | ミステリ

直木賞受賞第一作が“寂しいじいさんをたぶらかして遺産をせしめるババア”のお話だというのも黒川さんらしいなあ。

現実の事件との類似が騒がれているのも、かつてグリコ森永事件の容疑者にリストアップされた、つまり現実を洞察する能力が飛び抜けていることの証左か。

現実の方が青酸化合物という物証を残してしまったお粗末さだったのに比べ、こちらのばあさんはなかなか優秀な殺人者だ。セックスの手練れであることで彼女は次々に男を籠絡し、金をせしめていく。しかしそれ以上にあくどいのが結婚相談所をいとなむ男で……

という展開の何が怖いかというと、実はオモテに出てこないだけで、いまこの瞬間にもこんな“作業”が進行中なのではないかと思わせることだ。登場人物たちは最後にはみんな悲惨な目に会うが、それでもひとりぐらいは高笑いを続ける設定にする方法もあっただろう。でもそれだと、あまりに現実とシンクロしてしまうのだろうか。

映画化切望。ヒロインは……秋吉久美子様でお願いします!

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ほりぃ散歩Vol.07 目の前が日本海

2014-12-28 | 日記

Vol.6「トワイライトエクスプレス撮ったぁ!」はこちら

そうかトワイライトエクスプレスはなくなっちゃうのかあ……と残念に思いつつ本日は忘年会のお話。

まことに久しぶりの一泊の忘年会。湯野浜のみやじま。そこに行くというとみんなが「津波が来たらだいじょうぶ?」と訊くのがおかしい。それほどに、海っぺり。

で、ここの露天風呂は屋上にあって、ご覧のように船の形をしている。つまり日本海にただよう小舟のなかで風呂につかっているというシュールな誤解ができるわけだ。もんのすごい風が中年男の裸体をさいなみます。

朝早く行ったので入っているのは教務とわたしだけ。しみじみとした話をする。露天でやるこっちゃない(笑)

そこへやってきたのが今年の新規採用。一年目からとんでもないロケーションを経験できたわけで、とてもうらやましい。宴会が終わってからお姉さんたちにさんざん説教をくらったらしく、それもうらやましい。天童で初任研受けてきたばかりなのに夜も初任研。ほほ。

Vol.08「台町ほろ酔いはしご酒2015」につづく

コメント (6)
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「天城越え」 (1983 松竹)

2014-12-25 | 港座

原作は松本清張の短篇。天城峠における土工殺しの真相とは……

いやしかし原作を読んでいないので確言できないけれど、三人しか夜の天城峠にはいなくて、ひとりが殺されたとなれば、容疑者はふたり。そのひとりが否認しているのだからもうひとりを少しは疑ってみるでしょう普通。

確かに犯人とされた女性には暴力的な性向があり、被害者と情交しているのだから容疑は濃い。でも、あまりに見切りがはや過ぎる。

もちろんそれでもこの映画が見せるのは、はすっぱな警察への態度と、少年へのあふれる情愛の双方を(そして土工への淫らな表情と)きっちりと表現した田中裕子のおかげだ。

“自前”の放尿シーンなどのガッツはもちろんだが、あらかじめ人物像を固めていたからこそできる演技。こんな新人女優の登場には、そりゃ誰でも驚きます。

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「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」 万城目学著

2014-12-24 | 本と雑誌

わたしが万城目学ファンだ!と力強く宣言するにはなにか足りない。あ、わたしはデビュー作の「鴨川ホルモー」を読んでいなかった(笑)。

なぜこの話題作が産業編集センターなる聞き覚えのない出版社から出たのか不思議だったけれど、ここが新人賞を主催していたんだね。しかしそんな地味な新人賞(ボイルドエッグ新人賞)から噂が噂を呼んで大騒ぎになるあたり、日本の読書界はまだまだ捨てたもんじゃない。

あふれるユーモアと、それを裏打ちする壮大な歴史観。いい感じだ。で、その続篇である「ホルモー六景」がまたいいのよ。特に「ローマの休日」的な、その名も「ローマ風の休日」がいい。あの楠木ふみ(映画ではなんと栗山千明)がバイト先の後輩に「楠木さんの彼って、どんな人なんですか」と質問されて

「なんか、だめな感じの人」

と答えるあたりに爆笑。最高のラブストーリーでした。

メリー、メリークリスマス。よい聖夜を。

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明細書を見ろ!2014年12月差額号 ワンス・アポン・ア・タイム in 山形

2014-12-23 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2014年12月号その3「本日のでぶ」はこちら

久方ぶりの差額支給です。前号で予想したように、本会議が終わるのとほぼ同時に県からメールが来ました。さあ本気で明細書を見てもらいましょう。今回の支給額は

・給料表の水準を0.21%引き上げる

・勤勉手当を0.2月分引き上げる

結果が反映しています。もっとも、給料は全員が上がっているわけではなくて、若手が中心です。左上の【給料・議員報酬・報酬】の欄に金額が印字してある人は、来月からベースアップの恩恵を感じることができるはず(同時に昇給もするのでわけわかんないか)。

金額的には勤勉手当の方が大きくても、生涯賃金で考えると、ベースアップははるかに強力な味方なのです。五十代でベースアップもなく、行政職給料表のどんづまりにいるので昇給もしない事務職員が言うのでまちがいはありません。

かつての山形県職員には、配偶者が公務員でもないかぎりへそくりできるお金がけっこうありました。寒冷地手当が8月10日に出たり(御存知のように庄内地方では現在支給されていない)、3月に半月分ほどの期末手当が支給されたり(6月と12月に現在は統合)、そしてこの、差額があったり。

でも悪いことはできないもので

「あなた、市役所から児童手当の手続きはお済みですか、ってチラシが来たけどだいじょうぶ?」

うわあ、公務員だけは職場から支給されるからばれないと思っていたのに。

「あなた、国家公務員の人たちが、なぜだか今日(3月中旬)、並んでお手当をもらっていたけどあれはなに?」

うわあ、奥さんに国の機関でバイトさせたおれがバカだった。

ということで幾多の夫婦の危機をのりこえ、内心では「差額だけは絶対に気づかれないよな。ふ」とほくそえむ学校事務職員……学習能力のない亭主の、明日はどっちだ。

画像は「フューリー」
先週末で上映は終わってしまいましたが、ブラピの新作は見ごたえがありました。そうか、あいつも51才かあ。アンジェリーナ・ジョリーに財布は全部渡してそうだけど。

2015年1月号「いい話と悪い話2015」につづく

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明細書を見ろ!2014年12月号その3 本日のでぶ。

2014-12-22 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Queen - Fat Bottomed Girls (Official Video)

2014年12月号その2「年金一元化」はこちら

その共済組合は、だから存在理由をアピールする意味もあって今年から新たに「個別訪問型特定保健指導」なるものを開始しています。

「全国訪問健康指導協会の○○と申しますが、××先生お願いします」

という電話がやけにかかってきて、なにやらうさんくさいなあと思っていたら、わたしにも電話が。

健康診断でメタボだとされた方々に、職場に訪問して指導することに……」

そうだったのか!そういえば電話がかかってきた人たちの共通点は「そんなに痩せているわけではない」ことだった。うううう。ということでこの協会から電話がくると開き直って

「で、今日のでぶは誰ですか?」

と答えております。

特集はQueen。生徒指導主事の挑発にのったわけではありませんが(のったんですけど)わたしも語ってしまいましょう。

本国よりも先にブレイクしたのはチープ・トリックなどもいっしょですが、このバンドはとにかく売れました。確かにルックスはハード・ゲイとおばさんだけれど、ロジャー・テイラーは絵にかいたような美男だったので、彼はドラムスというよりルックス担当だったかも。ギターキッズはブライアン・メイ、女の子たちはロジャーに夢中。

この四人組は全員が曲が書けるのが強みで、わたしが好きなのはジョン・ディーコンが書いた(壮絶に酷評された)「地獄へ道づれ」でした。まさかこれがマイケル・ジャクソンのために書かれたとは知らなかったなあ。アルバムはなんといっても「ジャズ」が最高傑作。

2014年12月差額号「ワンス・アポン・ア・タイム in 山形」につづく

ということでQueen特集の最後はFat Bottomed Girls。「JAZZ」はほんとうにすばらしいアルバムだったなあ。

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軍師官兵衛 第五十話 「乱世ここに終わる」

2014-12-21 | テレビ番組

第四十九話「如水最後の勝負」はこちら

前回の視聴率は、意外なことに下落して15.8%。ドラマ的に盛り上がりに欠けた(それはこの一年をとおしてもそうだったけれど)回だったとはいえ、ちょっと不満かな。

序盤に伏線をはり、後半に対応しながら感動を呼ぶ、という大河の法則(勝手に断定)からいえば、確かに周到さは足りないドラマだったかもしれない。でも出演者たちの本気モードが途中から感じられて、おかげでこの最終回はとても味わい深かった。

なにしろ臨終の床で、死に顔にうっすら涙が伝わる岡田准一や、涙どころか鼻水まで果てしなく流れる高橋一生など、これマジでしょ。にしても、まわりの人間にきちんと感謝して死にゆくあたり(現実は伏見で亡くなっていたと番組の最後にいきなりばらすのが笑える)、うらやましい人生。

如水の計算違いは、日本を二分した関ヶ原の激突が、わずか半日で決着したこと。策を弄する時間が足りなかったのだ。確かにわたしたちは、関ヶ原の帰趨を知っているので「あ、そうですか」と思うけれども、考えてみれば敗勢を感じれば西軍は近江、京都、大坂と落ちていく方が自然ですもんね。

官兵衛の予想をはるかにこえて、三成は原理主義者だったのかもしれない。安国寺恵瓊、小西行長とともに斬首される彼は、しかし天下を争う経験に微塵も後悔していない。その部分で、如水は感じることもあっただろう。

一年間見通して、わたしも後悔はないです。五十週を消費してしか描けないものは確かにあると思いました。それでは次回は「真田丸」でお会いしましょう。え、来年は違う?そんな現政権にヨイショするような大河を誰が見るもんですか。

「軍師官兵衛アカデミー賞」を勝手に選定すると、主演男優賞は岡田准一で動かないとしても、助演男優賞は柴田恭兵、田中哲司、濱田岳、高橋一生、竹中直人、そして寺尾聰が俳優としての格をひとつ上げたでしょうか。

女優賞は二階堂ふみ、阿知波悟美、福島リラが印象深く、なにより高岡早紀の色香にクラクラきたというところかな(笑)。

ということで本日の視聴率は……19%弱と読みました。長い間おつきあいいただいてありがとうございました。山形はいま、雪が静かに降り続いています。

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「フューリー」 Fury (2014 SONY)

2014-12-20 | 洋画

冒頭とラストに、白い馬が登場する(最後のはちょっとしか出てこないので気をつけて)。ペガサスに代表されるように、白馬はきわめて神話的存在なので、この過激な戦争映画も、実は神話ですよという縁取りがなされている。

ストーリーはきわめて単純。1945年4月というから、あと一ヶ月でナチスが降伏する直前のドイツ。「フューリー(激怒)」とペイントされた砲身をもつ一台の米軍戦車の、わずか一日のお話。

乗員のリーダーは、「あいつといると死なない」と信頼されているドン(ブラッド・ピット)。部下に、私生活の荒れはおさまったのかシャイア・ラブーフ、「大いなる陰謀」の若き学生役が泣かせたマイケル・ペーニャなど。

転戦に転戦を重ねた彼らは、そのなかで次第に人間性を失っていく。戦場だから仕方がないんだと。

そんなところへ転属されてきたのが、タイピストとして入隊したはずなのに、戦場にかりだされてしまったノーマン(童貞役ならまかせとけ「ノア」のローガン・ラーマン。この映画における未経験とは、セックスだけではなく、殺人でもあるあたりがせつない)。彼の眼は同時に観客の眼で、アメリカにとって偉大な戦争だったはずの第二次世界大戦が、しかしどれだけ血塗られたものだったかが冷徹に映し出される。アメリカ人、これを見てどう思っただろう。

青空や陽光はほとんど描かれず、地面はぬかるみ、意外な方向から銃弾は飛んできて首は飛び、脚はひきちぎられ、そして神経を痛めていく。

彼らの最後のミッションは、ある十字路を守ること。ドイツの優秀なタンクによって(戦車の一騎打ちのシーンはすごい)たった一台になったフューリーは、強敵の戦車を倒したのに、ケチな地雷のために車輪が壊れてしまう。そこへドイツ軍の行進が……

修羅場となったクロスロードを真上から撮ったラストに息をのむ。戦争のはらわたとは、こんなものなのだと。

誰でもがスピルバーグの「プライベート・ライアン」との相似を指摘すると思う。しかし大きな違いは、フューリーの搭乗員たちの、母国での生活をまったく語らないでエンディングを迎えるということ。怒りの矛先は、純粋に人間の愚かさに向けられている。150分、疲れましたー。

コメント (2)
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