事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の訃報2024年10月PART2 白井佳夫 92歳没

2024-11-03 | ニュース

PART1西田敏行篇はこちら

知らなかった。ショックだ。彼はわたしが愛読する映画雑誌「キネマ旬報」において、1968年から1976年まで編集長をつとめた。いわゆる“伝説の編集者”である。

何度も特集したように、わたしがキネマ旬報を読むようになったのは1975年のことだから、ギリで間に合ったということか。白井以前のキネ旬がどんな存在だったかといえば、“業界の官報”と揶揄されるように、硬直化した誌面だったらしい。

そのため、白井編集長は新しい血を雑誌にどんどん投入した。「読者の映画評」の常連投稿者たちに声をかけ、映画評論家デビューを果たした人も多い。文部官僚だった寺脇研さんもその一人だし、金髪好き(笑)の秋本鉄次や、映画の作り手の方にシフトした内海陽子さんもそうだ。

他に、「話の特集」の編集長だった矢崎泰久とイラストレーターの山藤章二、そして落合恵子のトリオが放談するシネマ・プラクティス、映画の名セリフをイラストとともに紹介した和田誠の「お楽しみはこれからだ」、加えてルポライターの竹中労の日本映画縦断などの連載によって、キネマ旬報は活気ある雑誌となった。面白かったなあ。

しかしそんなキネ旬の活況を、ひとり苦々しく思っていたのが、当のキネマ旬報社の社長なのである。彼は総会屋で、右翼でもあった。アナーキストだった竹中労の連載に難癖をつけ、白井とともにキネ旬から追放した。キネ旬黄金時代の終焉。

しかし以降、白井さんは映画評論家として健筆をふるい、テレビにも進出。大いに名をあげることになった。92歳の大往生。さみしいけれども、うらやましい人生ではないかという気もする。

北上次郎が亡くなったとき、「本の雑誌」は追悼特集を組み、それはまだつづいている。そこまではいかなくても、現在のキネマ旬報が、白井さんの死をどのように扱うのか、発売日が待ち遠しい。

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今月の訃報2024年9月号PART8 山藤章二

2024-10-06 | ニュース

PART7 茶木則雄篇はこちら

こちらは社会面にデカデカと載っていたので否応なしに気づく。似顔絵のシャープさは比類がなかった(だから政治家イラストに山藤を起用した朝日新聞が他紙をその意味では圧倒した)。ギャグの切れ味も鋭くて、特にわたしが好きだったのは筒井康隆と組んだ「狂気の沙汰も金次第」です。

ああそれにしても2024年9月は、同世代が次々に亡くなった1ヶ月だ。さみしい。

西田敏行篇につづく

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今月の名言2024年9月号PART2 米

2024-10-05 | ニュース

Ryuichi Sakamoto (坂本龍一) - G.T.

2024年9月号PART「解散」はこちら

「国はいまだに増産の方向にかじを切りません。日本米は海外でも人気です。量を作っても輸出すれば良いのではないでしょうか。困っている国に援助したら国際貢献にもなります。食料自給率が38%では、有事があり、輸入できなくなった時、どうするのでしょう。
 また、収入がなければ後継者はいません。産業は廃れていきます。しかもそれは人間に欠かせない食料の問題です。食料自給率を上げ有事に備えるためにも、所得補償など生産者を守る施策が絶対に必要です。農業・食料は国防だと思います。」

農林業と食糧・健康を守る埼玉連絡会(埼玉食健連)の事務局次長である松本慎一さんの主張。

まことに正論だと思う。そうあらねばならないのは理解できる。しかし日本の農政は50年も減反をやってきて、農家もそれに慣れきっている。

そして、農家の70%が65才以上なのだ。攻めの農業に転じることができるかは微妙。どうも近所の連中の話によれば、今年の作況もかなり悪いらしい。来年もこの騒ぎになる可能性はおおいにある。ただひとつ、確実なのは“日本の米はうまい”ということ。これだけは救いだ。

本日の1曲はFMで坂本美雨の「ディア・フレンズ」に小泉今日子がゲストで出て、山形公演がフィナーレだと聞いた途端に

「行こうか!」

と考える。南陽が会場。ああダメだ。もう長距離運転がしんどくなってる。でも小泉今日子だよ!

ってことで今回は坂本のお父さんの曲で。

「ルールを守る」につづく

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今月の訃報2024年9月PART7 茶木則雄 67歳没

2024-10-05 | ニュース

唐沢俊一篇はこちら

新聞の訃報欄を読んでいて「えっ」と声を出してしまった。なんてことだ。

「本の雑誌」の連載や、「このミステリーがすごい!」の立ち上げなど、日本のミステリ界にとってとても大事な書評家だったのに。

このミス恒例の覆面座談会では、全員匿名なのにどうしても茶木さんだけがまるわかりだったのがおかしかったなあ。

山藤章二篇につづく

 

コメント (2)
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今月の訃報2024年9月PART6 唐沢俊一 66歳没

2024-10-04 | ニュース

「トリビアの泉」ベルリンの壁は勘違いで崩壊した

福田和也篇はこちら

あの「トリビアの泉」は唐沢の著作がスタートとなった企画。雑学が雑学であるがゆえに貴いというコンセプトはすばらしかった。なかなか「へぇボタン」を押さないタモリがおかしかったし、司会の高橋克実と八嶋智人のコンビもよかった。

だから当時、わたしは唐沢のホームページを何度も訪れていたし、弟の漫画家である唐沢なをきとの共著を買ったりもしていました。

ところが、彼の文章に多くの盗作、というか無断引用があると糾弾されたあたりから暗雲は立ちこめる。妻とは別れ、弟とは絶縁状態だったとか。晩年の彼を、知らずにいてよかったかもしれない。

茶木則雄篇につづく

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今月の訃報2024年月PART5 福田和也 63歳没

2024-10-03 | ニュース

J.D.サウザー篇はこちら

保守派の論客として名を馳せ、著書「作家のねうち」で文学者たちにケンカを売りまくった(でも石原慎太郎のことは絶賛している)福田は、とにかくいつも誰かと争っていたイメージ。

しかしわたしにとっては坪内祐三との対談がすばらしかった。教養と教養の激突。しかも笑える。あの二人が、もうこの世にいないなんて。

唐沢俊一篇につづく

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今月の訃報2024年9月PART3 白鳥あかね 92歳没

2024-10-02 | ニュース

渡辺武信篇はこちら

伝説のスクリプター。この人にお世話になった映画人は数多い。そしてあの名著「スクリプターはストリッパーではありません」の著者でもある。無類の面白さだったなあ。

そして、日活ロマンポルノの傑作の1本である「わたしのSEX白書 絶頂度」(曽根中生監督)の脚本家でもあります。

J.D.サウザー篇につづく

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今月の訃報2024年9月PART2 渡辺武信 86歳没

2024-10-02 | ニュース

岡田太郎篇はこちら

詩人にして映画評論家。わたしが映画雑誌「キネマ旬報」を買い始めた高校生のとき、彼は「日活アクションの華麗な世界」を連載中で、映画史の王道からはずれていた日活アクションを解題していた。すばらしい仕事だったと思う。

白鳥あかね篇につづく

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今月の名言2024年8月号PART3 令和の米騒動

2024-09-05 | ニュース

Belinda Carlisle - Heaven Is A Place On Earth (Official HD Music Video)

百条委員会はこちら

「インバウンドの消費増もそれほど大きいとは言えません。月約300万人の訪日客が日本に1週間滞在し、日本人並みにコメを朝昼晩食べると仮定しても、その消費量は全体のわずか0.5%程度。実際にはコメを3食取る訪日客は多くはなく、消費量はもっと少ないはずです。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏の米不足に関する発言。わたしも今回の米不足の一因がインバウンドという報道はまゆつばだと思っていた。

最大の原因は、米がないという事態に消費者たちがあわてふためいただけだ。不足していると報道されることで不安があおられ、今回のようなことに。減反をやっている国が米不足という異常さを、もっとかみしめよう。

米がない?ならケーキを食っとけ。実はそのマリー・アントワネット的な発想が日本の農業にとっていちばんつらい展開だ。食習慣が変わることが、どれだけ米作に悪影響を与えることか。

米なんかいっくらでもあるんですよ。その辺の農家に

「この着物で米を譲ってください」

って話になれば(昨日会った学校事務職員にそうギャグをかまされた)どんどん出てきます。実はうちにもそんな話がありました(笑)。

あと二週間で新米が出てくるってば。それまではケーキ食べればいいのよ。

本日の1曲は、ということでベリンダ・カーライル。

解散につづく

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今月の訃報2024年8月号PART1 石川好(よしみ) 77歳没

2024-08-26 | ニュース

小原乃梨子篇はこちら

わたしは山形県酒田市の人間だから、彼のことはまず酒田市美術館の館長として認識している。彼がどのような経緯で館長に就いたかは判然としないが(想像はできます。この美術館の収蔵品が誰のものかを考えれば)、彼のような著名人が来てくれたことが素直にうれしかった。

というのも、矛盾するようだけれど、わたしにとって、彼はやはり「朝まで生テレビ」の人だったからだ。極端なサヨクでもウヨクでもなく、大島渚のように怒鳴るでもなく(笑)、一歩ひいて冷静な発言をするのが石川好という人だった。

山形新聞のコラムに彼のことが紹介されていて、1985年にPL学園の野球部を取材しに行って、さぞや猛練習をしているのかと思ったら、グランドには中森明菜の曲が大音量で流れ、桑田真澄は芝生に寝っ転がっていたそうだ。

しかし自主的に淡々とノルマを自らに課す桑田を擁したPLは、その年の夏の甲子園で東海大山形を29-7という記録的な(というか記録だけど)スコアで破ることになる。まあ、清原までマウンドに立たせる展開は、それはそれで面白かったわけだが。

田中敦子篇につづく

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