田中敦子篇はこちら。
下品なくらいにハンサム、という印象。訃報ではどんなメディアも「太陽がいっぱい」を代表作に挙げている。しかしわたしはリアルタイムでは見ていないし(わたしが生まれた年の作品だ)、「サムライ」「冒険者たち」「ボルサリーノ」「さらば友よ」にも間に合っていない。
封切りで観たのは「暗黒街のふたり」あたりからだろうか。ドロンの映画はほとんど東和(いまの東宝東和)が配給していて、だから「ル・ジタン」の配給を東映洋画部にドロンが勝手に契約したことに東和の川喜多社長夫妻が激怒したエピソードは前にも紹介しましたね?
いずれにしろ、ハリウッドメジャーではない作品で勝負せざるをえなかったインディペンデント系配給会社である東和やヘラルドにとって、ドロンはまことにありがたい存在だったはずだ。
しかしこの頃にはドロンの人気は下降線をたどっていて、興行成績もふるわなくなっていた。でも、それでもダーバンのCMなどで培われた美男のイメージは長く彼を“代表的なフランス男”にしていた。もっとも、フランス人はドロンよりもジャン=ポール・ベルモンドの方を愛していたようだが。
にしてもね、ドロンの恋愛遍歴にはびっくり。ロミー・シュナイダー(大好きでした)、ニコ、ナタリー・ドロン(大好きでした)、ミレーヌ・ダルク(大好きでしたぁ)……で、この人は年をとってからも美男だったの。すごい。
ジーナ・ローランズ篇につづく。
2023年版はこちら。
さあ検診結果の 2024 版が到着。またしても身長は縮み(昔は 182 センチあったのに)、体重も最低記録。
ショックだったのは聴力に異常があったことで、これは初めて。左耳が高音に反応しなかったのだ。
むかしからの記録を読み直したら、やはり中性脂肪と肝機能に問題がある男なのでした。でも毎日ムチャ飲みしているのに、γ-GTは正常値。謎。
検査項目 | 今回 | 判定 | 前回 | 前々回 | 正常値 |
身長 | 178.6 | O | 179.2 | 179.5 | |
体重 | 67.7 | 68.9 | 68.0 | ||
BMI | 21.2 | 21.5 | 21.1 | 18.5~24.9(体重÷身長÷身長) | |
肥満度 | 普通 | 普通 | 普通 | ||
腹囲 | 79.5 | 81.5 | 79.0 | 男性85.0㎝未満 | |
視力右 | 0.8 | 0.8 | 0.7 | ||
視力左 | 0.7 | 0.9 | 1.0 | ||
聴力(右) | 所見なし | C | 所見なし | 所見なし | |
聴力(左) | 所見あり | 所見なし | 所見なし | ||
血圧 | 141/91 | C | 124/86 | 132/86 | 収縮期129以下、拡張期84以下 |
心電図 | 心房細動 | 心房細動 | 心房細動 | ||
内科診察 | 所見なし | O | 所見なし | 不整脈 | |
尿一般 | O | ||||
赤血球 | 500 | O | 479 | 473 | 男420以上 女380以上 |
血色素 | 17.2 | 16.7 | 16.0 | 男13.1~17.9 女12.1~15.9 | |
ヘマトクリット | 50.6 | 48.3 | 48.0 | 男39.0以上 女36.0以上 | |
白血球 | 4600 | 4100 | 3300 | 3500~8499 | |
総蛋白 | 6.5 | C | 6.5 | 6.2 | 6.5~8.2(全身の栄養状態) |
A/G比 | 1.5 | 1.7 | 1.6 | 1.2~2.3(免疫) | |
総ビリルビン | 0.4 | 0.5 | 0.7 | 0.2~1.2(黄疸の有無) | |
AST(GOT) | 51 | 72 | 60 | 30以下(肝臓の酵素) | |
ALT(GPT) | 37 | 51 | 56 | 30以下(肝細胞の酵素) | |
ALP | 54 | 53 | 43 | 38~113(胆道系酵素) | |
血清アミラーゼ | 71 | 51 | 51 | 37~125 | |
γ-GT(γ-GTP) | 33 | 66 | 38 | 50以下(飲酒) | |
LDL-C | 49 | C | 51 | 58 | 119以下(悪玉コレステロール) |
HDL-C | 60 | 36 | 60 | 40以上(善玉コレステロール) | |
中性脂肪 | 455 | 396 | 257 | 149以下(多いと血液粘っこい) | |
尿素窒素 | 18.5 | B | 19.4 | 18.0 | 8.0~20.0(上がると腎機能障害) |
eGFR | 53 | 52 | 56 | 腎機能推定値 60以上 | |
クレアチニン | 1.10 | 1.12 | 1.05 | 男1.10以下 女0.80以下(腎機能) | |
血糖 | 101 | O | 97 | 89 | 空腹時99以下、随時139以下 |
呼吸器X線撮影 | 異常なし | O | 異常なし | 異常なし | |
胃がん検診 | 慢性胃炎 | A | 慢性胃炎 | 慢性胃炎 | 精検不要 |
便潜血検査 | 異常なし | O | 異常なし | 異常なし |
第31回「月の下で」はこちら。
今回のタイトルを「たがために」とみんなが読めるのは、あのヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」のおかげだと思う。で、あの名作をみんなが知っているのは、映画のおかげもあるはず。イングリット・バーグマンとゲイリー・クーパーのやりとりが今でも鮮烈だ。
Where do the noses go? I always wondered where the noses would go
「キスをするときに、鼻は邪魔にならないの?」
スペイン市民戦争の最中におけるやりとり。泣ける。んで、ご存じのように鼻は邪魔にならないです。あなた、なりました?ついでに言えば、あの和田誠さんは英語教師が原題の
For Whom the Bell Tolls
を
For Whom the Bell Rings
と語ったことでその教師への尊敬を一切失ったらしい。怖い怖い。
さて「光る君へ」だけど、読者として帝を想定して書き始めた「源氏物語」なのに、もう紫式部にとってそんなことはどうでもよくなっている。作家の業とはそんなものだという大石静さんの宣言だろうか。誰のためにでもない。自分のために書く。
陰陽師である安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が逝く。藤原道長に、これからの圧倒的な隆盛を予言して。
確かに、これから道長にはいいことばかりが起こる。欠けることもない月に自分をなぞらえるくらいに。
教室の後ろのほうに年表が貼ってあって、平安時代はやけに長い。400年ぐらい続いたのだから。ああ平安な時代だったんだろうなあと子どもたちは思う。わたしもそう思いました。しかしその内実はこのように政争の連続だったわけで……怖い怖い。
第33回「式部誕生」につづく。
小原乃梨子篇はこちら。
わたしは山形県酒田市の人間だから、彼のことはまず酒田市美術館の館長として認識している。彼がどのような経緯で館長に就いたかは判然としないが(想像はできます。この美術館の収蔵品が誰のものかを考えれば)、彼のような著名人が来てくれたことが素直にうれしかった。
というのも、矛盾するようだけれど、わたしにとって、彼はやはり「朝まで生テレビ」の人だったからだ。極端なサヨクでもウヨクでもなく、大島渚のように怒鳴るでもなく(笑)、一歩ひいて冷静な発言をするのが石川好という人だった。
山形新聞のコラムに彼のことが紹介されていて、1985年にPL学園の野球部を取材しに行って、さぞや猛練習をしているのかと思ったら、グランドには中森明菜の曲が大音量で流れ、桑田真澄は芝生に寝っ転がっていたそうだ。
しかし自主的に淡々とノルマを自らに課す桑田を擁したPLは、その年の夏の甲子園で東海大山形を29-7という記録的な(というか記録だけど)スコアで破ることになる。まあ、清原までマウンドに立たせる展開は、それはそれで面白かったわけだが。
田中敦子篇につづく。
第36章「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」はこちら。
こんな映画があったのか、と思ったらテレビ用でした。
でもデニス・ホッパーが出ているし監督はなんとニコラス・ローグ(「地球に落ちてきた男」「赤い影」)。デリラを演じるのはエリザベス・ハーレイだから文句なしの美女。でも、わたしがこれをレンタルしたのは、「サムソンとデリラ」ってどんなお話だか知りたかったから(笑)。キリスト者にとっては旧約聖書のお話だからなじみ深いんでしょうけどねえ。
怪力のサムソンはデリラによってその力を失うが……という、いわゆるむかし話ですね。神のお告げで、絶対に髪を切ってはいけないとされているのに、デリラの誘惑によって切られてしまうあたりのおまぬけさは愛らしい。武器が青銅器から鉄へと変わる時期というあたりも面白い。
もっとも、ユダヤ人をいじめるペリシテ人たちが使う鉄器よりも、サムソンの怪力が勝る展開はいかにもいかにも。偶像崇拝とか神の奇跡とか、おなじみのユダヤ噺でもあります。
2024年7月号「あからさま」はこちら。
それにしても先月の雨には驚きました。次第に被害の全容がわかってきましたが、被災された方々にはお見舞い申し上げます。
あの雨がどれだけすごかったかというと
・日降水量 288mm
・日最大10分間降水量 24.5mm
・日最大1時間降水量 86.0mm
いずれも観測史上最大。24時間降水量にいたっては289.0mmでもちろん1位。2位は2011年8月18日の179.0mmですからダントツだったわけです。
業者のなかには荒瀬川沿いに住んでいる人がいて、もちろん避難。最初は八幡小学校、つづいて一條小学校、そして一條コミュニティセンターに移動させられたとか。
「死ぬかと思いました」
「それにしたってほとんど死者が出なかったのはよかったな」
亡くなった人たちには悪いけど。
「あれはね、みんなちゃんと逃げたからです」
なるほど。
あれ以来、他人事に近かった線状降水帯という言葉がいっきに身近に。天気予報でこのフレーズが出ると、ああたいへんだなあとみんなが嘆息するようになりました。
◇
さて、この話が初任者研修の一環なのは、特別休暇を特集するからです。
今回のような大雨のときは、「災害」と区分された特別休暇が適用されます。事由は
「風水震火災、天災地変等により職員の現住所が滅失、破壊した場合」
となっています。また非常災害により交通が遮断された時も適用されます。まあ、物理的に出勤できないわけですから当然ですが。
天災関連では、派生してボランティア休暇もあります。お役所言葉ですみませんが
「職員が自発的に、かつ、報酬を得ないで次に掲げる社会に貢献する活動(専ら親族に対する支援となる活動を除く)を行う場合」
として
「地震、暴風雨、噴火等より相当規模の災害が発生した被災地又はその周辺の地域における生活関連物資の配布その他の被災者を支援する活動」
として1年度内に5日間までとることができます。そして出勤簿にはその他という印を事務職員が押します。
◇
実はこのその他という印は、ほとんどの人たちの出勤簿に押されます。いわゆる夏季特休。これも解説すれば
「職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合」
で、6日間だと。実はこの特別休暇にはダークな過去があるんですけど、初任者研修で解説するわけにもいかない。小一時間ほど語ってみたいところですが。
画像は「銀河鉄道の父」(2023 キノフィルムズ)
原作:門井慶喜 主演:役所広司 菅田将暉
およそ国語の教科書に載ったなかでもっとも暗いお話は、わたしにとっては宮沢賢治の「永訣の朝」。死にゆく妹が「あめゆじゆとてちてけんじや(雨雪を取ってきてください、賢治や)」とリクエスト。この映画は、あれを忠実に描いています。ううう泣いた泣いた。
2024年9月号PART1「児童手当改正」につづく。