2021年3月号PART6「#教師のバトン」はこちら。
「力ずくで排除するくらいやらないとダメ」
秋田県の佐竹敬久知事による、“路上飲み”対策へのコメント。大阪府知事の私権制限容認論といい、威勢のいいことではある。内心では喝采する人も多いのだろう。次に出てくるのは禁酒条例だろうか。
コロナ対策に有効な方策を打ち出せず、市民の行動を縛ることだけに血道を上げているようにわたしには見える。そしてそれに一定数の支持が集まるのだとすれば、世間がいらついていることの証左ではないかとも。
秋田の知事のいらつきはこんなところにも見える。岩手県境の「八幡平アスピーテライン」と山形県境の「鳥海ブルーライン」の二つの観光道路について閉鎖を検討すると放言したのだ。さすが、お殿様の家系に生まれただけあって、合戦の準備ですか。
これはさすがにいくらなんでも、と積雪を理由に変更したようだが、要するに他県の連中を入れたくないという地元民の気持ちを代弁したのだろう。知り合いが秋田に行ったとき、“庄内ナンバーだと嫌われるから”と行き先とは別のところに駐車させられたと聞いたときはびっくり。
うーん。グローバル経済の行き着く先が、鎖国であり、県境の強化であり、市町村の境を強烈に意識する結果につながっているとは皮肉な話ではある。
もちろん、某高校の運動部がこの時点で関西に遠征に出かけ、クラスターが発生したとかいう話を聞けばわたしだって呆れる。優先順位がわからないのかと。
しかし行政の長がファナティックにふるまうことで解決するほどコロナはやわな存在ではないだろう。医療体制の強化、検査件数を増やすなど、あなた方がやることはもっともっとたくさんあるはずではないか。西の方の知事たちも、うれしそうにテレビに出ている場合ではないのはおわかりですよね。
本日の1冊は佐々木譲の「降るがいい」
ミステリの意匠を脱ぎ捨てた作品集。背後にうっすらと事件を感じさせるあたりの寸止めがすばらしい。
PART2「金看板」につづく。