事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その147「こちら空港警察」中山七里著 KADOKAWA

2024-10-12 | 日本の警察

その146「警視庁いきもの係」はこちら

警察小説であり、お仕事小説でもある。国際空港における捜査の特殊性が読ませます。前に「あぽやん」でグラウンドスタッフの仕事がいかに多岐にわたるかが理解できたけれど、この作品における、乗客の態度の悪さはすごい(笑)。カスハラの嵐。

中山七里おなじみのどんでん返しが用意されていますが、これは納得できるものでした。ハイジャックがメインのお話と思わせて……

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日本の警察 その146 警視庁いきもの係 大倉崇裕著 講談社

2024-07-12 | 日本の警察

その145「新・教場」はこちら

いきもの係というシリーズ名だけれども、当初は警視庁総務部動植物管理係というサブタイトルだった。もちろんこんな部署は現実には存在しない。

このシリーズは現在

「小鳥を愛した容疑者」(小鳥、ヘビ、カメ、フクロウ)

「蜂に魅かれた容疑者」

「ペンギンを愛した容疑者」(ペンギン、ヤギ、サル、ヨウム)

「クジャクを愛した容疑者」(ピラニア、クジャク、ハリネズミ)

「アロワナを愛した容疑者」(タカ、アロワナ、ラン)

「ゾウに魅かれた容疑者」

……の6作品が刊行されています。

かつて捜査一課で「鬼」と呼ばれた敏腕刑事の須藤は、頭部を撃たれてしまい、動植物管理係という閑職に追いやられる。そこには、薄(うすき)佳子という人間的に壊れているけれども、動植物についてだけは天才的という部下が待っていた……

いくら社会常識からずれていると須藤が指導しても、すっとんきょうな反応しか示せない薄に、次第に須藤も影響を受けていくあたりが笑える。須藤が薄の能力を認めるのとシンクロしているのね。

動物についてのうんちくが満載で、しかもミステリとしてしっかりしている。さすが、劇場版名探偵コナンの脚本を何作も書いている大倉崇裕だ。

え、このシリーズはドラマ化されているの?須藤と薄は誰がやったのかな……ええええ、渡部篤郎と橋本環奈ぁ!?それに寺島進と浅野温子がからむのか。

見なきゃ。

その147「こちら空港警察」につづく

 

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日本の警察 その145「新・教場」長岡弘樹著 

2024-04-10 | 日本の警察

その144「陰の季節」はこちら

風間公親の教場シリーズ最新作。風間が警察学校の教官になりたてのころ。このシリーズの魅力は、警察をめぐる小ネタが徹底的にぶちこまれていること。警笛を庭に埋めておくと、土壌のpHが変化してそこに咲くアジサイの色が変わる。そんな事象を、学生たちの人生にからめるあたりがうまい。

最後に参考文献が掲載されているけれど、意外に下世話な書が多い。北芝健の警察内幕ものとか。しかしこれは、あの「新宿鮫」の初期でも大沢在昌は雑誌「ラジオライフ」から引用していたりしていたので、日本警察小説の伝統芸と言えるかもしれない。

その146「警視庁いきもの係」につづく

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日本の警察 その144「陰の季節」「刑事の勲章」(BS-TBS)

2023-11-23 | 日本の警察

その143「可燃物」はこちら

あ、そうか。これは「64 劇場版」のスピンオフなんだ。だから佐藤浩市奥田瑛二三浦友和などの豪華キャストが集結しているわけだ。

署内の警察手帳が軒並み紛失したのはなぜか、女性警察官がなぜ失踪したかなど、横山秀夫原作らしい展開。でもね、榎戸耕史さん演出にしては、あまりに大仰な演技の連続なのに辟易。仲村トオルにそういうのは似合わないっす。

その145「新・教場」につづく

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日本の警察 その143「可燃物」米澤穂信著 文藝春秋

2023-11-17 | 日本の警察

その142「臨場 劇場版」はこちら

米澤穂信が警察小説?「黒牢城」で時代小説と本格ミステリをみごとに融合させた米澤が、今回も成功させています。意外に、表題作には賛成できないんだけど、その他はすばらしい。

まるで警察小説のパロディかと思えるくらいに周到な警察論、組織論がくり広げられます。名探偵である葛警部ものとして、シリーズ化必至と読みました。

その144「陰の季節」「刑事の勲章」につづく

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日本の警察 その142「臨場 劇場版」(2012 東映)

2023-10-27 | 日本の警察

その141「黒石」はこちら

横山秀夫の原作はもちろん読んでいる。鑑識を主人公にすえるという発想は、ドラマとして絵面が地味ではないかと懸念される。でもテレビ朝日は「科捜研の女」にしても、そのあたりをクリアする自信があったのだろう。わたしはテレ朝のドラマは苦手なので見ていなかったけれども。

さて、そのテレ朝と歴史的に関係深いのが東映だ。東映といえば昔は時代劇中心の会社だった。その伝説は生きています。内野聖陽だけではない大仰な台詞回し、最終的にお涙頂戴で観客を納得させる展開……この劇場版はまさしくそのとおりの作品。だからこそ高齢者が多いとされるテレ朝ドラマの視聴者たちは安心して見終えることができるわけだ。

その143「可燃物」につづく

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日本の警察 その141「黒石(ヘイシ) 新宿鮫Ⅻ」大沢在昌著 光文社

2023-10-23 | 日本の警察

その140「香港警察東京分室」はこちら

それはシリーズ最凶最悪の殺人者――。

冷酷な〝敵〟認定で次々に出される殺人指令を受け、戦慄の手段で殺人を続ける〝黒石〟。どこまでも不気味な謎の相手に、新宿署・鮫島刑事が必死の捜査で挑む!(Amazon)

……もう三十年も続いている新宿鮫。累計800万部のベストセラー。光文社にとっても大沢にとってもお宝のシリーズだ。

さてこの第12作は、新宿鮫第Ⅱ期の最終作という位置づけだろうか。

第Ⅰ期は、警察内部の秘密を託されたためにキャリアでありながら新宿署から異動もできず、警部のまま出世もできない鮫島が、孤高のなかで正義を貫いていく展開。しかし鮫島を認めている桃井という上司と、ロックシンガーの恋人(じゃまでしたけど)が彼を支えてもいた。第Ⅰ期は恋人と別れ、桃井が殉職するという形で幕を閉じる。

第Ⅱ期は、中国残留孤児三世たちが組織する「金石(ジンシ)」と呼ばれる犯罪ネットワークとの攻防。その緩やかな組織内に潜む暗殺者が黒石。花崗岩を含む凶器によって脳天を叩き潰すという残虐さ。はたしてどんな武器なのか。

残留孤児が日本でどのように遇されたか、その悲しみが背景にあるので、単なる勧善懲悪ものにはなっていない。シリーズ最高作だと思っている「毒猿」への言及もちゃんとあります。

前作「暗約領域」でもそうだったが、女性上司とのやりとりなど、鮫島の態度はとてもオトナだ。おそらく大沢在昌は、警察官とは、あるいは公務員とはこうあるべきではないかという理想を鮫島に仮託しているのだと思う。新作、お待ちしております。

その142「臨場 劇場版」につづく

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日本の警察 その140「香港警察東京分室」月村了衛著 小学館

2023-10-11 | 日本の警察

その139「外事警察」はこちら

香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する……

直木賞候補作にして、落選してしまった作品(笑)。読み終えてつくづく思う。こりゃあ受賞できないと。なぜなら、面白すぎるから

設定は機龍警察に劣らず奇天烈で、他のセクションから侮られているのもいっしょだ。現代の国際関係を奇天烈な設定だからこそリアルにぶちこんである。

香港警察東京分室とは一種の侮蔑語で、癖の強い厄介者が集められているのだが、日本側も香港側も、冷静で有能な上司のもと、熱血な刑事たちが事件を通じて連携を深めていく。

ある意味、類型的ともいえるキャラクターをそろえていて、だからこそ娯楽小説として安心して読み進めることができる。まあ、この安定ぶりも直木賞向きではなかったかも。

その141「黒石」につづく

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日本の警察 その139「外事警察」(2009 NHK)「外事警察 その男に騙されるな」(2012 東映)

2023-09-21 | 日本の警察

その138「爆弾」はこちら

あれはなんのドラマの番宣だったんだろう。「ケイゾク」だったかな。ローカル局のために、オンエアする局ごとにCMを作成するパターンってあるじゃないですか。山形であれば「TUYで」とか。主演女優がせいいっぱいがんばっているのに、そばに立っている渡部篤郎は、よほど眠かったのであろう、もうろうとして今にも倒れそうだった。これ、放送事故じゃないかと思うようなレベル。プロ意識ないのか渡部!(笑)

しかし「外事警察」における渡部篤郎はプロ意識のかたまり。スパイ天国といわれる日本を、水際で守っている感じをうまく出していた。

外事警察……ソトゴトと呼ばれる彼らの捜査手法は、「協力者」という名の情報提供者を“運営”することだ。

しかしその協力者が暴走を始め、ソトゴトたちが翻弄されてしまい……しかしそう見えて実は、な展開はさすが古沢良太脚本だ。むやみに面白かったっす。確かに、その男に騙されるなだよな。あ、ちょっとネタバレ。“その男”とは誰かが最後に明かされる。そう来たかあ。

ソトゴトに尾野真千子片岡礼子、北見敏之、滝藤賢一渋川清彦山本浩司……渋いところをそろえたなあ。誰が裏切り者であってもおかしくない感じがいい。

協力者はドラマ版が石田ゆり子、映画では真木よう子とこれまたいい感じ。上司が石橋凌で、内閣官房長官が余貴美子。彼女のメイクが誰かをモデルにしているのがまるわかりで笑えました。

その140「香港警察東京分室」につづく

 

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日本の警察 その138「爆弾」呉勝浩著 講談社

2023-09-06 | 日本の警察

その137「暮鐘」はこちら

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。

「ここから三度、次は一時間後に爆発します」

警察は爆発を止めることができるのか。(講談社BOOK倶楽部)

……「このミステリーがすごい!2023年版」第1位を獲得した作品。わたしはこの人の江戸川乱歩賞受賞作品「道徳の時間」に懐疑的だったので、彼の作品を久しぶりに読む。

とてもよくできたお話だし、動画サイトの使い方も画期的だ。なにより、何を考えているのかわからない容疑者が、次第に魅力的に見えてくるあたりの仕掛けがすばらしい。

ただね、ないものねだりかもしれないけれど、結末はひねりすぎじゃないですか。

その139「外事警察」につづく

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