事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「琴乃木山荘の不思議事件簿」大倉崇裕著 山と渓谷社

2024-10-31 | ミステリ

大倉崇裕の最大の特徴は、とにかく小説のネタに徹底的に淫していることだと思う。動物にしても(いきもの係シリーズ)、怪獣(笑)にしても(「警視庁怪獣捜査官」「スーツアクター探偵の事件簿」は面白かった)対象への思い入れがすごい。

これは山岳に関しても言えることで、山登りが好きな大倉崇裕の本領が発揮されたのがこのミステリだ。山小屋にバイトに来た女性が遭遇する日常の謎が読ませる。短いなかでもきちんとオチをつけるあたり、さすがだなあ。

にしても、わたし山と渓谷社の本を読んだのって生まれて初めてです。山とは無縁の人生でしたから……

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「アステロイド・シティ」Asteroid City(2023 パルコ)

2024-10-30 | 洋画

直訳すれば「小惑星の町」。この町は劇作家が舞台のためにつくった架空の町。劇中劇の製作過程が描かれるという複雑な設定。まあ、監督が「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ヶ島」などのウェス・アンダーソンですから(笑)。

彼の映画には、その才能への信頼と、きっと現場が楽しいだろうこともあって豪華なキャストが集合します。今回もすごいですよ。

トム・ハンクススカーレット・ヨハンソンティルダ・スウィントンエドワード・ノートンエイドリアン・ブロディウィリアム・デフォー、そしてマーゴット・ロビー(わたしは今年、彼女の映画を何本見たのだろう)。

わけわからん、と敬遠する人もいるだろうけれども、俳優たちが気持ちよさそうに演じているのを見るだけでも楽しめます。

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今月の名言2024年10月号 ルールを守る

2024-10-29 | 国際・政治

J.Boy (ON THE ROAD 2011 "The Last Weekend")

2024年9月号PART2「米」はこちら

「私たちは、厳しい反省のもと、政党である以前の問題として社会の一員としての基本に立ち返り、まずは“ルールを徹底して守る政党”に生まれ変わります。」

自民党のHPから。最大与党の公約の筆頭が「ルールを守る」なのである。あまりと言えばあまりに情ない状態。しかし今回の選挙結果を考えれば、なりふり構わず裏金問題を払拭したかったとも見える。失敗したわけだけど。

今回の衆院選は、もちろん自民党が自らすっころんだのであり、決して立憲民主党が勝利したわけではない。そこを誤解して調子こいちゃうと、立憲の未来は危ういだろうと思う。

当選者の経歴を見ると、やたらに弁護士とアナウンサーが多いわけで、土臭い選挙運動はいかにも苦手そうなのも心配。風がやんだときに、ものを言うのはやはり選挙区での地道な日々の活動なのを徹底できるだろうか。まあ、党首が辻立ち王なのでそのあたりの指示はあるんだろうが。

維新の退潮は、仕方のないことではあるだろう。関西万博の経費の大幅増と不人気。支持した兵庫県知事があの状態、加えてスキャンダルが相変わらず多いあたり、さすが維新。にしたって大阪ではあいかわらず強いのがつくづくよくわからないのでした。

もっとわからないのは国民民主党の伸長で、一気に4倍とは。代表は「手取りを増やす」というわかりやすい政策のおかげと自賛しているようだけど、立憲とほとんど選挙区がかぶっていないので、政権批判票が流れたということか。それにしても二十代の比例票がトップというのにはびっくり。

公明の石井代表はつくづくと運のない人だと思う。代表になった途端に落選ですから。でもこれは戦略ミスでもあるだろう。落下傘候補として埼玉から出馬することにどれだけの勝算があったのか。

参政党や日本保守党はねえ……河村たかしが国政に復帰。この人が民主党の議員だったって信じられます?

さて、少数与党となった自公は、野党側にさまざまな妥協案を提示してくるだろう。どの党がどのような反応をするのか、興味深い。

もうひとつだけ今回の選挙の特徴をあげれば、それは低投票率。おそらくは政治全体に対する幻滅が影響したのだろうし、その幻滅の幅が少ない党が勝利したということ。だから言えるじゃないですか。なんでNHK党は候補を立てなかったんだろう。立ててたら木っ端微塵だったろうに。お金の問題?あんなにお金を集めたのに?

本日の1曲は浜田省吾の「J.BOY」このベタさは貴重なんだと思う。日本における最高の労働歌じゃないか。

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「決戦は日曜日」(2021 クロックワークス)

2024-10-29 | 国際・政治

窪田正孝宮沢りえが共演とくれば、どうして見ていなかったか不思議。で、とても面白かったのです。選挙のお話。

父親の鉄板の地盤をうけついだ世間知らずの娘(宮沢りえ)と、政治に嫌気がさしてきた議員秘書(窪田正孝)。後援会の古狸たちのいやらしさや、迷惑系ユーチューバーの存在など、脚本がとにかく考えてある。

内田慈、小市慢太郎、音尾琢真などの秘書軍団のクールさもいい。結局政治を回してるのはおれたちじゃんかよ、って感じ。

おそらくこの映画をいちばん楽しんだのは私設秘書たちだったのでは?

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光る君へ 第41回「揺らぎ」

2024-10-28 | 大河ドラマ

第40回「君を置きて」はこちら

怒涛の日曜日。朝から総合防災訓練。自治会のみなさんのご機嫌をうかがい、その後は廃校となったわたしが卒業した小学校跡地で、バケツリレーや土嚢づくり。午後からは……それだけではない。

ワールドシリーズでは山本が勝ち、それはいいのだけれど大谷が負傷。衆院選はご存じのとおりの結果で、放映時間が変更になった大河ドラマの真裏では日本シリーズ。やれやれ。

ここは気合いで大河でしょ。あと何回もないわけだし。

こちらも衆院選以上に熾烈な権力争い。三条天皇と道長が主導権をどちらが握るかで駆け引きがつづく。三条天皇の気持ちもわからないではない。なにしろ一条天皇の在位が25年も続いたので、自分が天皇になったのは36歳にもなってからなのだ。まあ、平成天皇と今上を考えれば若いわけですけど。

彼はやりたいこともたくさんあったろう。それを左大臣である道長に牽制されたくはない。

女性たちの方もたいしたものだ。一条天皇が亡くなったことを嘆く彰子のために、紫式部は和歌の会を開くことを提案。しかしそこには招かれざる客である清少納言がやってきて痛切なセリフを。しかも喪服を着て。

「ここはわたしが歌を詠みたくなるような場ではございませぬ」

これにはさすがの紫式部もぶち切れて、紫式部日記に

「清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人」と記す。

要するに偉そうなふるまいがすぎると。対立は決定的なものになる。

先週紹介した「火口のふたり」の柄本佑と瀧内公美が、なんであたしの子を優遇してくれないのよ!ともめるあたり、しみじみとする。みなさんあの映画は傑作ですやっぱり。あ、成人映画であることはお忘れなく。

画像は古川日出男による現代語訳「紫式部日記」そんなの出てたの!?

第42回「川辺の誓い」につづく

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「変な家」雨穴著 飛鳥新社

2024-10-26 | 本と雑誌

150万部を超えるベストセラー。リストに躍り出たときは、いったいこの本はなんなんだ、と不思議に思っていた。どんな経緯でブレイクしたのかさっぱりわからないのでした。

ということは世間のアンテナとわたしのそれがずれているということなのかな。帰省した娘はこの本を妻にすすめていたぐらいなので、若い世代にはフィットするのだろうか。

読んでみました。

「…………」

確かにこれはわたし向きではない。ストーリーは陰惨にすぎるし、文章もまどろっこしい。ミステリとしてはかなり無理がある……これってひょっとして一時期にブームになったケータイ小説のノリなのでは?

あ、そうか。だからこそ読書することへのハードルが低く、ベストセラーになったわけだ。

「あら、あなたも読んだの?変な家」

「う、うん」寝床にあったからね。

「どうだった?あの子(娘)はすすめてきたけど」

「うーん(笑)」

「やっぱり。あたしもきつかったの」

少なくともわたしたちの世代に向けて書かれた本ではない。え、映画は50億越えの大ヒット?続篇もベストセラー?うわあ。

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「ハンティング・タイム」Hunthig Time ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋

2024-10-25 | ミステリ

懸賞金ハンターであるコルター・ショウのシリーズは、最初はどうなることかと思ったが、どんどん面白くなっている。家族のいろんなことから解放されたのが奏功したのでは?

どんでん返しがお得意のディーヴァーだけど、そう思いながら読んでもまたしてもだまされ、そしてそれが快感。今回のこのひっかけに気づける人はよほど……ひねくれているんだと思います(笑)

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「すずめの戸締り」(2022 東宝)

2024-10-24 | アニメ・コミック・ゲーム

君の名は。」「天気の子」に続く新海誠の大ヒットアニメ。日本でも中国でも韓国でも驚異的な興行成績をマーク。

ストーリーはタイトルどおり。ヒロインの鈴芽(すずめ)が、“開いてしまった戸”を閉める物語。その戸からは災厄が忍び出る。閉めることが専門である「閉じ師」も存在し、しかし彼は神獣によって椅子に姿を変えられてしまう。その椅子の脚が1本足りないという設定が絶妙だ。アニメとしても動きがはずむ。

テーマは東日本大震災。もちろん重い話だが、SNSを利用した追跡劇など、かなり周到なつくりになっている。

今回も声優は豪華。伊藤沙莉、染谷将太、神木隆之介、松本白鴎、深津絵里たちが主演の若いふたりをサポートしている。

ラストシーンは、ふたりが“すれちがわない”あたりがうまい。とてもいい気分で見終えることができた。大ヒット納得です。

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「ミレニアム7 鉤爪に捕らわれた女」カーリン・スミルノフ著 早川書房

2024-10-24 | ミステリ

死後に大ベストセラーとなったスティーグ・ラーソンの3部作はとんでもなく面白かった。

その後を継いだダヴィド・ラーゲルクランツの3部作も健闘していた。もっとも、ダヴィドは執筆に疲れ果て、鬱病を発症してしまったのだけれど。

さあ新シリーズの開始だ。おなじみのリスベットとミカエルが登場し……あれ?ほとんどワクワクさせてくれないのだ。いったいどうしたことだろう。次作に期待したいところだけど、はて。

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ヘアーの不毛18「バベル」Babel(2006 GAGA)

2024-10-23 | 洋画

その17「ニンフォマニアック」はこちら

その15「プレタポルテ」はわいせつ過ぎるということでgooから削除されてしまいました。むしろ誇らしい。

もう名作しか撮れなくなってしまったイニャリトウ監督作品。たくさんの名優が出演していることで、わたしはこの映画を避けてました。おもーい作品なんだろうなと。

確かに、重かった。国も民族も無縁に見えたそれぞれが、次第に連関していく過程が描かれる。ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司とくれば肌合いが感じられるのではないでしょうか。

さて、菊地凛子。メジャーデビュー作でいきなりヘア丸出しのシーンを演じ切る。根性のある女優なんだなあ。それからの活躍を考えれば、むしろ当然か。

画面いっぱいにケイト・ブランシェットのアップに、ああこの人はすごい女優なんだなと納得。すごい。

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