創作日記&作品集

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「わたしなりの枕草子」#384

2012-04-22 07:57:25 | 読書
【本文】
【読み】
 一本二十七
 女房の参りまかでには
 女房の、参りまかでには、人の車を借る折もあるに、いと快う言ひて貸したるに、牛飼童(うしかひわらは)、例の「し」文字よりも、強く言ひて、いたう走り打つも、「あなうたて」とおぼゆるに、郎等(をのこ)どもの、ものむつかしげなる気色にて、
「疾うやれ。夜更けぬさきに」
などいふこそ、主(しゆう)の心推し量られて、「また言ひ触れむ」とも、おぼえね。
 業遠(なりとほ)の朝臣(あそん)の車のみや、夜半(よなか)・暁分かず人の乗るに、いささかさることなかりけれ。ようこそ教へ習はしけれ。それに、道に遇ひたりける女車の、深き所に落とし入れて、得曳き上げで、牛飼の腹立ちければ、従者(ずさ)して打たせさへしければ、まして、戒めおきたるこそ。
 以上、一本

【読書ノート】
「し」=牛や馬を追うかけ声。
 言ひ触れむ=相談(車を借りようと)する。
 業遠(なりとほ)の朝臣(あそん)=高階業遠(たかしなのなりとほ)。
 従者(ずさ)して打たせさへしければ=業遠が自分の従者(ずさ)に(不心得な従者(ずさ)を)打たせた。戒めおきたるこそ=(自分の従者を)教えさとしてあるからこそである。