創作日記&作品集

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「わたしなりの枕草子」#383

2012-04-21 05:19:25 | 読書
【本文】
【読み】
 一本二十六
 初(はつ)瀬(せ)にもうでて
 初(はつ)瀬(せ)に詣でて局にゐたりしに、あやしき下どもの、後ろをうちまかせつつ、ゐ並みたりしこそ、ねたかりしか。
 いみじき心発(おこ)こして参りしに、川の音などのおそろしう、榑階(くれはし)を上(のぼ)るほどなど、おぼろげならず困(こう)じて、「いつしか仏の御前をとく見奉らむ」と思ふに、白衣(しろぎぬ)着たる法師、蓑(みの)虫(むし)などのやうなる者ども集まりて、起ち居、額(ぬか)づきなどして、つゆばかり所もおかぬ気色なるは、まことにこそねたくおぼえて、押し倒しもしつべき心地せしか。いづくも、それは、さぞあるかし。
 やむごとなき人などの参り給へる御局などの前ばかりをこそ、払ひなどもすれ、よろしきは、制し煩ひぬめり。さは知りながらも、なほ、さし当たりてさるをりをり、いとねたきなり。
 掃(はら)ひ得たる櫛、垢に落とし入れたるも、ねたし。

【読書ノート】
 九十段「ねたきもの」の断章か?
 後ろ=下襲(したがさね)の裾(きよ)(すそ)。うちまかせつつ=長く引く。(都では)身分の低い者が(初(はつ)瀬(せ)では)一人前の格好をしている。
 榑階(くれはし)=長廊下。今も長いですよ。困(こう)じて=疲れる。いつしか=何とかして。所もおかぬ=遠慮しない。
 よろしきは=まずまずの身分の者(私のような)。さし当たりて=現に。当面。
 「掃(はら)ひ」を「祓ひ」、「垢」を「閼伽(仏に供える水)」とする説もあるそうです。