創作日記&作品集

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連載小説「Q」10

2020-04-18 06:20:54 | 小説
連載小説「Q」10
団地の入り口にある鳥瞰図を見ると、川沿いの道路は真っ直ぐ東に延びている。
その道と並行して二本の道路がある。
団地を横切る百メートルほどの北南の道路が四本、九つのブロックの間にぎっしりと名前が書かれた家がある。
よく見ると名前が白いペンキで消された家が混じっている。
川に沿ってフェンスがはられている。川の向こうにも住宅団地がある。
フェンスに沿って五十センチほどの土手があるが、雑草に被われている。
花壇も無残な姿になっている。
光一はとにかく一軒一軒インターホンを押していこうと思った。
真夏の真昼、インターホンは一服の清涼剤を得るための唯一の手段でもあった。
とにかく冷房の効いた場所に入りたかった。
しかし、インターホンを押す度に期待は裏切られた。ほとんど応答がなかった。
たまに相手が出ても、名乗ると無言で切られた。

連載小説「Q」#1-#10をまとめました。