国王は重い扉を開けて大広間に入った。誰もいない。誰も迎えに出てこない。物音一つない。敵の血をあびた疲れた身体を引きずり、王は甲冑を解いた。ドサッと足下に落とした。血が染みついた土足のまま、絨毯を敷き詰めた螺旋階段を上がった。寝室にたどり着くと、ベットに身体を投げ出した。すぐに眠りに落ちた。深い夢の底で見たのは戦いの続きだった。殺した敵の顔が次々浮かび、なぜかみんな哄笑していた。王は夢の中で子供のように泣いていた。
「もう、いやだよ。もう、いやだよ」
女の声がした。
「よく眠っているわ」
「戦うしか能のない男」
「何人殺したの?お馬鹿さん」
「シー、起きているかも」
「大丈夫、よだれを垂らしているわ」
王は夢の続きか現実か分からなかった。
「汚いね」
「汚い」
「地下のお風呂場で洗ってあげましょ」
「誰が」
「あなたが」
「いやよ」
「それじゃ」
「ほっときましょ。でも、私のお風呂はいやよ」
「面白いことがないかなあ。退屈」
「村へ行こうか」
「村ね」
「狩りか…」
「退屈より退屈でない」
王が目覚めると、化粧の香りがかすかに残っていた。そして、かすかな血の匂いが混じっていた。
「もう、いやだよ。もう、いやだよ」
女の声がした。
「よく眠っているわ」
「戦うしか能のない男」
「何人殺したの?お馬鹿さん」
「シー、起きているかも」
「大丈夫、よだれを垂らしているわ」
王は夢の続きか現実か分からなかった。
「汚いね」
「汚い」
「地下のお風呂場で洗ってあげましょ」
「誰が」
「あなたが」
「いやよ」
「それじゃ」
「ほっときましょ。でも、私のお風呂はいやよ」
「面白いことがないかなあ。退屈」
「村へ行こうか」
「村ね」
「狩りか…」
「退屈より退屈でない」
王が目覚めると、化粧の香りがかすかに残っていた。そして、かすかな血の匂いが混じっていた。
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