あけましておめでとうございます。今年から新連載小説をはじめます。焦らず一週間に一度ぐらいの更新でいこうと思います。
連載小説 トリップ
一回 プロローグ「三種の神器」
ピエト・モンドリアン
僕の部屋の説明をするためには、君が僕の部屋を訪ねたと仮定することから始めるのが分かりやすいだろう。
君は、まず表札を見る。僕の名前を確認してノックする。どの部屋も同じ色の同じ形のドアだからこのことはとても大切だ。君の訪問のために鍵はかかっていない。ノブを回して中に入る。玄関で靴を脱ぐ。右側がトイレと風呂場になっていると思うだろう。その通りだ。左奥に冷蔵庫と小さなキッチンが見えるだろう。短い廊下を歩いてワンルームの和室に入ると、殆ど何もないのに驚くだろう。テレビもエアコンもない。部屋の真ん中に文机がぽつんと置いてある。それがやけに目立つ。抽斗に小さなノートパソコンが入っているのだが、勿論、君は抽斗を開けたりはしない。
小さな窓が一つあり、窓際にベッドがある。シーツはビジネスホテルの使用前の状態にきっちりとたたまれている。
君は窓を開けてみる。隣の壁が目の前に迫っている。手を伸ばせば粗壁が触れるだろう。君は何故か急いで窓をしめる。
この部屋には最低限の生活用品しかない。君は奇妙な疲れを感じて座り込む。その時、僕が帰ってくる。挨拶もなしで僕は「食事は三種の神器を使うのだ」と説明する。IH調理器(ガスは使わない)、電子レンジ(オーブン機能はついていない)、卓上型食器乾燥機(食器入れの代わりにもなる)。これで僕の部屋の説明は終わりだ。僕は君を玄関まで送っていく。さよならの挨拶もなくドアは閉まる。君は僕の部屋を訪れた最初のそしておそらく最後の人になる。
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一回 プロローグ「三種の神器」
ピエト・モンドリアン
僕の部屋の説明をするためには、君が僕の部屋を訪ねたと仮定することから始めるのが分かりやすいだろう。
君は、まず表札を見る。僕の名前を確認してノックする。どの部屋も同じ色の同じ形のドアだからこのことはとても大切だ。君の訪問のために鍵はかかっていない。ノブを回して中に入る。玄関で靴を脱ぐ。右側がトイレと風呂場になっていると思うだろう。その通りだ。左奥に冷蔵庫と小さなキッチンが見えるだろう。短い廊下を歩いてワンルームの和室に入ると、殆ど何もないのに驚くだろう。テレビもエアコンもない。部屋の真ん中に文机がぽつんと置いてある。それがやけに目立つ。抽斗に小さなノートパソコンが入っているのだが、勿論、君は抽斗を開けたりはしない。
小さな窓が一つあり、窓際にベッドがある。シーツはビジネスホテルの使用前の状態にきっちりとたたまれている。
君は窓を開けてみる。隣の壁が目の前に迫っている。手を伸ばせば粗壁が触れるだろう。君は何故か急いで窓をしめる。
この部屋には最低限の生活用品しかない。君は奇妙な疲れを感じて座り込む。その時、僕が帰ってくる。挨拶もなしで僕は「食事は三種の神器を使うのだ」と説明する。IH調理器(ガスは使わない)、電子レンジ(オーブン機能はついていない)、卓上型食器乾燥機(食器入れの代わりにもなる)。これで僕の部屋の説明は終わりだ。僕は君を玄関まで送っていく。さよならの挨拶もなくドアは閉まる。君は僕の部屋を訪れた最初のそしておそらく最後の人になる。
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