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団地内は東西に三本の道が通っているから、真ん中の道を、インターホンを押しながら、Uターンして帰ろう。
三本目の道は昼飯を取ってからにしよう。
「スーパーマーケットにフードコートがあった」
団地まで引き返すと、団地の端に空き地を挟んで家があるのに気づいた。
通り過ぎたはずだが気づかなかった。
他の家に比べて敷地が半分ぐらいしかなかった。三十坪ほどだろう。
その家のインターホーンはまだ押していない。
――はい
返事があった。
――S社から来ました
――少々お待ちください
光一はここに来るために暑い最中、歩いてきたのだと思った。
表札には田代順平とあった。
連載小説「Q」#1-#10をまとめました。