散日拾遺

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教育は国の礎

2013-06-28 22:49:22 | 日記
古風なことを、と言い給うな。
本気の本気なんだから。

① 三度繰り返す吉田満の言葉
「この手記をまとめることを思い立ったとき、二年間にわたる不毛の戦塵生活からのがれてきたばかりの弱冠二十二歳の私が、曲がりなりにもこの筆馴れない文体と修辞をもって全編を貫き得たことを、戦前の行き届いた国語教育の賜物として感謝したい。」
『戦艦大和ノ最期』昭和49年のあとがきから。

② 金本位制復帰に伴う超緊縮予算の中で、浜口・井上の民政党コンビが義務教育費についてだけは増額を固守したこと。

③ あわせて、次の文に注意を払いたい。
「ここで、日本の場合を考えてみましょう。十九世紀半ばの明治維新当時のことです。
ヨーロッパが一世紀をかけて経験してきたような近代的な工業化や経済発展は、日本ではまだ緒についたばかりでした。それにもかかわらず、日本人の識字能力の水準はヨーロッパを凌駕していました。
明治時代(1868-1911)における日本の発展初期においては、このような人間の潜在能力の発展が主眼とされました。たとえば、1906年から1911年にかけては、日本全国の市町村予算の43%が教育費にあてられていたわけです。
この時期における日本の初等教育の普及はたいへん急速でした・・・(以下略)」
『貧困の克服』アマルティア・セン(集英社新書)

著者は、アジア人として初めてノーベル経済学賞を受賞したインド人である。
(1933年ベンガル地方の生まれとあるから、今日ならばバングラデシュ人であったところか。)

④ 日本の教育費(OECD 2011)、正確なデータ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2011/10/07/1311502_8_1.pdf
日本の教育機関に対する公財政支出の対GDP比は、前年と変わらず3.3%。
OECD加盟国(31か国)中最下位。
(初等中等教育段階に関しては32か国中30位、高等教育段階に関しては31か国中最下位)

以上、とりあえずのメモとして。

もちろん、金をかけさえすれば良いというもんではないが、金のかけ方を見ればその社会が何を重んじているかが分かるというものだ。

三人の息子たちが義務教育を通過していく様子を見ていて、あれこれ疑問や文句もあるものの、日本の学校の先生達は今までのところ大いに健闘してくれていると思う。
「ろくに金をかけてもらえず、そのくせ仕事は年々キツくなり、お上からは無理難題を押しつけられ、モンペの突き上げに胃の痛い思いをしながら、現時点ではどうにかこうにか耐えている」
という意味だ。
いつまでもこれが続くとは、とても思えない。現に学校教員のメンタルヘルスは、かなり深刻な状況にある。

三男が通っている区立中学校に対しては、本当は親として言いたいことがいろいろあるんだよ。
しかし、先生達の苦労を見ていると舌鋒も緩めざるを得なくなる。
それではいけないのだろうけれどね。