散日拾遺

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今年のツバメ

2016-08-24 09:54:54 | 日記

2016年8月23日(水)

 例年の如く、伊豫松山まで車で帰省した。途中、兵庫の一、二泊をはさんで片道1,000kmとホラ吹いてきたが、新東名が延伸し伊勢湾岸道が整備され、本四架橋は「しまなみ海道」が距離も時間も有利と判明するなど状況の変化あり、今年は往路821km、復路825kmで「千キロ」とは言いづらくなった。

 旅の終わり近く、首都圏に入る前の最後の休憩は足柄SAでとることが多かったが、今年は混雑を避けて一つ東の鮎沢PAにしてみる。足柄までが静岡県で鮎沢は神奈川県だから、いよいよ帰ってきた感じがする。

 鮎沢PAには以前にも立ち寄った記憶があるが、急峻な森山の懐に抱かれ、そそり立つ緑がなかなかの眺めである。休憩所の建物も気持ちよく呼応している。画面左上の枝は撮影時には気づかなかったが何の木だろうか、わずかに赤い葉が混じり、夏の終わりを告げるようだ。

 

 用を足しに建物に入るところで、頭上のがらんとした空間にかしましく囀りがこだましている。見上げれば多数のツバメが、あるいは止まって胸を張り、あるいは狭い屋根裏で旋回をくり返し、どうやら今年生まれた若いのが思い思いに飛翔の準備をしているようである。

 屋外から飛び込んできた一羽が、ひときわ高い巣の前で空中静止し、とたんに巣の中から若鳥が三羽、けたたましく口を開けて乗り出した。見れば立派なツバメの制服着用で、この図体でまだ親から餌もらってるのとからかってみたい様だが、写真で見直すとまだまだうぶ毛まじりで体ができていないのだ。

 

 何とか給餌の瞬間を撮りたいとしばらく待ったが、そうなるとなかなか帰ってこないもので、ミケランジェロみたいに首が曲がるのもありがたくないので断念した。その代わり・・・

 

 これはなかなかでしょう。ただし右側に移っているのは彼らの親ではなく、飛翔訓練中の若鳥である。なので三羽のヒナは、口を開けて身を乗り出す代わりに口をつぐんで引き気味になっている。

***

 この風景がとりわけ印象的だったというのも、この夏のわが家はツバメの営巣がなかったからである。門裏のいつもの場所に取り付こうとしたペアはあったものの、作りかけの巣があっけなく落ちることを繰り返し、結局失敗に終わったのだそうだ。

「鈍くさいねえ」

「いや、それが・・・」

 父が案じたのは近隣の農地に何か変化があって、巣の材料になる土の性質が変わったのではないかということだった。なるほど、そういうこともあるかもしれない。ツバメの生態はかく人のそれと連動している。責任ということを思う。

 松山がそういう次第であっただけに、鮎沢のツバメに会えたのが殊の外うれしいのだった。

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