散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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すごいサイトがありました!/ הַרְפּ֣וּ (ハルフー)

2016-08-30 10:45:39 | 日記

2016年8月30日(火)

 悔しいが、こういう蓄積は断然英語が優勢に決まっている。日本語をかませずに「הַרְפּ֣וּ וּ֭דְעוּ」をそのまま検索に放り込んだら、夥しいヘブライ語のサイトに混じって、ヘブライ語・英語まじりの項目が出てきた。それをたぐって「ほう!」と嘆声、見事という他はない。

Scholar`s Gateway:  http://scholarsgateway.com/

Interlinear Study Bible:  http://www.studylight.org/interlinear-bible/

 さしあたりどちらが良いとも判断がつかないが、いずれも旧約聖書のテキストに沿ってひとつひとつの言葉の原型・活用・語釈・用例・発音(音源付き!)などが一目瞭然の形で示され、便利この上もない。日本人の多くが必要以上に英語を苦にするのは真に残念なことである。「読むのはまあまあだが話すのが苦手」ならそれでも良いから、ともかくこの種のものを活用しない手はない。これだけの知的な宝が居ながらにして無料で活用できる、まったく何という時代だろう。

 で、僕の基本的な誤解と疑問があっという間に氷解した。

 「Be still」あるいは「Let be」と訳される言葉は、原語でも二語に違いないというのが僕の思い込みだった。そうではなくて、הַרְפּ֣וּ (ハルフー)の一語がそれなのである。「וּדְעוּ」は既に次の文の始まり、「Know that ~」だったのだ。「הַרְפּ֣וּ」は動詞「רפה」(ラファー)のヒフィル命令形と呼ばれる活用形で、「רפה」の語義としては to sink, relax, sink down, let drop あるいは withdraw といったものが挙げられている。retreat という連想も浮かび、なるほど、それでかと納得される。

 昂揚と緊張を放棄して沈み込みリラックスする、あるいは撤退する、そのようなイメージへの回帰命令を伝統的に「Be still(静まれ)」と表現したが、ある者はこれを「Let be(あるがままにあれ)」と訳し、またある者は「力を捨てよ」と言い換えたのだ。

 「הַרְפּ֣וּ (ハルフー)」 ~ "Let be" は "Let it be" のより根源的な形で、「我・汝関係」に照応するもののように思われる。"Be still" はその一側面を指示するに過ぎない。深く静かに響く言葉、日本語では何とする?

Ω


Let be...?

2016-08-30 09:16:57 | 日記

2016年8月30日(火)

"Be still" あるいは「ほたえな」の話の続き。勇を鼓してというか、怠け心にムチ打ってというか、ヘブライ語の原典を開いてみるが・・・

 הַרְפּוּ וּדְעוּ, כִּי-אָנֹכִי אֱלֹהִים;    אָרוּם בַּגּוֹיִם, אָרוּם בָּאָרֶץ

 何というか、まあ暗号だよね。だけどこういうのは慣れだけのもので、しばらく我慢して毎日眺めていると、ふと気づいたときにはそれが意味のあるまとまりに見えてくる・・・はずである。そういう感覚は一言語について一回しか味わえない。ポリグロットの中には、この感覚に味を占めて強迫的にこの作業を反復している人があるはずだ。強くもならない碁にふけるより、こっちのほうが生産的かな。

 厄介なのは右から左へ読み書きすることで、日本語だって昔はそうだったのだが欧米語とのつきあいの都合上、左から右にひらりと変身したのが、何でヘブライ語はできないかな。できないのじゃなくてしないのか、アラビア語(中東を中心に2億人以上が使用し、国連の公用語にもなっている大言語)も右から左だし、これを維持する方がトクなのかもしれない。こういう多様性は豊かさだと思うが、PC画面上で操作するには改行とかけっこう面倒なのね。

 ともかく、ポイントとなる部分を拡大すると、

 הַרְפּוּ וּדְעוּ

 たった8文字、2語なのに解読できない。辞書?辞書はでっかいのがあるんだが、引けないのですよ、活用が分からないから。引くはおろか、発音することもできない。ふと思いついて探したら、あったあった、ありました。ヘブライ語ー英語の旧約聖書対訳に、朗読音源を載せた公開サイトが!

 http://www.mechon-mamre.org/p/pt/pt0.htm

 詩編46を何度か通して聞いてみる。とりあえず耳にひっかかるのは「エロヒーム」と「アドナイ」、それぞれ「神」と「主」にあたる言葉で、ただそれだけである。肝心の部分(上記)は「ハルプ(フ)ー、ウドゥルー」という風に聞こえ、ああそのはずだとちょっと安心するが、それで理解が進むわけではない。

 ただ、この部分の英訳(どの版だかすぐには分からない)が、"Let be, and know that I am God." となっている。「静まれ」「力を捨てよ」に次いで、今度は「Let be」ですか。何でかくも多義的な・・・?Beatles の名曲など思い出され、ますます原語のカラクリが知りたくなってくる。

 ひょっとして、人生のキー・コンセプトがそこに隠れているかもしれない。

Ω