散日拾遺

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「?」マークが頭上に重い12月の木曜日

2016-12-09 08:47:06 | 日記

2016年12月8日(木)

 何かと慌ただしく、書きかけのまま5日ほども経ってしまったが、12月8日(木)午後7時のニュースのことである。次々に報道される一件ごとに「?」マークが頭上に追加され、しまいに重さで頭がツブレそうになった。たまたま真珠湾攻撃の日にあたり、首相の現地訪問が大いに話題になっているがそのことではなくて。

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 まずは税制改正大綱。酒税の見直しがひとつの目玉で「ビールは下げ、発泡酒は上げる」というので、街頭インタビューでビール党のお父さんは喜び、発泡酒派の奥さんが残念がる様子なんか紹介し、次は生産者に転じて日本酒製造者は笑顔、ワインメーカーは渋い顔という具合。悲喜こもごもにして和気藹々という流れのようだが・・・

 自分も酒は好きなので気が引けるけれど、酒害問題を誰も指摘しないのか気になる。日本人の心身の健康をめぐり、アルコール関連問題は顕・潜在的な一大脅威である。僕らの文化の重要な一部であるにしても「生活必需品」とは言えず、あくまで「嗜好品」との位置づけは譲れない。ならば酒税は高めに設定して税収をアルコール対策に充てるのがスジというものではないか。

 この件、「カジノIR問題」とも連動する。経済効果ばかり言っててギャンブル依存症対策はいいのかという野党の指摘は、この際まったく同感である。もっとも、「塾」の懇親会で勝沼さんに「パチンコはOKでカジノはダメという理屈が通らない」ことを指摘され、なるほどとも思った。問題はそこからで、「パチンコを容認しているのだからカジノも当然かまわない」になるのか、「そもそもパチンコは現状でいいのか」にいくのかが考えどころである。パチンコを禁止すべしなどとはいわない、性急・過度に清潔を求めるのは逆効果であること、歴史に名高い「禁酒法」の教訓が示す通り。ただ酒の場合と同様ギャンブル依存症は軽視できない問題だし、それを抜きにした経済効果論は、長い目で見てかえって国民経済上の負担を招きかねない。

 それに現首相はもともと「美しい日本の国柄」みたいなことに痛くこだわっていたはずだ。賭場を開帳して稼ごうという魂胆と美しい国柄がどう擦り合うものか、蓮舫に「品位がない」とつっこまれている図が可笑しく腹立たしい。

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 次が相模原事件。厚労省の検証・再発防止策検討チームが、措置入院患者を退院後も継続支援することを求めたらしい。「入院中から自治体と医療機関などが支援策を協議して、解除後も中長期的に支援していく」云々とあり、一見適切な勧告のようであるけれどやっぱり「?」が付く。チームの座長(法律の専門家)がテレビで「このような悲惨な事件を二度と起こさないため」という意味の発言をしていたが、気になるのはそこだ。いわゆる凶悪犯罪のうち措置入院後の患者が起こしたものがどれだけあるか、それを明らかにしてから話を進めないとおかしい。はっきりした資料が手許にすぐ出ないが、措置入院患者が退院後に重大な犯罪を犯しているケースは件数としては少なく、従って「継続支援」がなされていれば防ぎえた「この種の事件」も同様に少ないはず、「犯罪」の観点から見ればごく一部の希なケースと思われる。犯罪防止を目的として力を入れる部分かどうか。

 防犯と切り離して「継続支援」そのものを精神保健福祉の充実のために論じるなら大いに歓迎だが、どうもそう聞こえないのである。ニュースを一緒に見ていた家族が「退院後も追跡監視できるということ?」とつぶやいたが、そのように聞こえて仕方がない。TVに一瞬だけ映った被害者の家族 ~ さぞつらかろうに、頭をしっかり働かせておられる ~ が、「この事件全体の中では措置入院は決して主要な問題ではなく、さまざまな角度から考えるべきだ」と語っており、この話の続きこそ聞いてみたい。また、もしも本気で「継続支援」を考えるならたいへんな手間暇費用がかかることで、ただでさえ人手不足で根をあげている現場が「はいやります」と安請け合いできるはずもないのである。

 念のために断っておくが、この種の出来事の再発を防ぎたいのはもちろん山々だし、措置入院患者の継続支援もそれ自体は望ましいことである。ただ、この両者を因果関係で結び、前者の方策を考えるうえで後者に注目するのはポイントがずれていないかというのだ。心理学などでいう「誤った原因帰属」にあたるもので、このチームの方向性はさておき、一般にこうした原因帰属に飛びつく心性が極めてスティグマ親和的であるのはまちがいない。

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 締めくくりが厚木基地の騒音裁判、いわゆる第4次厚木基地訴訟である。上告審は二審判決を破棄し、「飛行差し止め、将来の被害補償いずれも認めない」との判決を下した。5人の裁判官全員一致だそうだが、どなたか一度ぐらいは実際の騒音を聞きに行ったのかな?僕は桜美林時代にしばしば経験した。騒音なんてものじゃない、金属音まじりのものすごい爆音で、通過するまでの数十秒~数分というものは授業どころか会話もできはしない。原告団は、せめて午後10時から午前6時までの飛行差し止めを求めたのだが、それが却下されたのである。こんな轟音を夜討ち朝駆けで聞かされる不快と苦しさを「国益の為に我慢せよ」って、アリですか?

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 「怒りを笑いに変換する」スキルがこういう時こそほしいものだが、まだまだ初心者の域にも達しない、まるで笑えない、塾があったら通いたい。そうそう Kokomin さん、この件は継続テーマですから今回の欠席を悔やむ必要は皆無ですよ。次回たっぷり語ってください。ところで、「わらふ laugh」と「ゑむ smile」を区別するのは笑い学のイロハのようだけれど、赤ちゃんのそれって両者が融合しているように思いません?ニーチェ先生が超人の完成型としてイメージしたのもそれであったような気がしますが、どうでしょう?

> 産後うつ病は産後2ヶ月ごろまでのお母さんに多いと言われているのは、2ヶ月を過ぎると赤ちゃんが笑うようになることと関係あるかしら…なんて考えたり。「この子が笑ってくれて可愛いと思えた」と話した産後うつ病のお母さんに希望が見えたので。

> 石丸塾参加したかったー!

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