散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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璇璣懸斡 晦魄環照 ~ 千字文120

2016-12-28 12:29:42 | 日記

2016年12月28日(水)

 璇は琁あるいは旋とも書かれ、玉の一種または北斗七星の第二星とある。璣とともに「丸くない玉」のことを意味し、璣は北斗七星の第三星。あわせて「璇璣」は天文観測の道具のこと、あるいはまた北斗七星を指すこともある。編者は前後のつながりから、星一般を指すものと解している。

 というのも、「懸斡」の懸は「(空に)かかる」こと、斡は「めぐらす/回転させる」ことであるから、「璇璣懸斡」で「玉のような星々が空にかかり、めぐってゆく」ととるのが自然だからだ。「斡旋」などとは下心にまみれた下世話な言葉だと思っていたが、「斡」と「旋」からこうして見直すと一転、冬の夜空の清冽な印象を帯びるようである。

 「晦魄」の晦は陰暦三十日(みそか)つまり月の最終日(「三十日の密か事」などと洒落てみようか)、魄は「月の光らない部分(いわゆる「海」?)とあるが、「李注」は晦が真っ暗で見えない新月、魄は月の見え始めることとするらしい。何しろ晦魄が移り変わり、月が満ち欠けしつつ照り輝くこと(環照)を指すのだと。環は輪の形の玉である。

 プラモデルのパーツを組み立てるみたいだ。めでたく完成:

 璇璣懸斡 環晦魄照 センキケンアツ/カイハクカンショウ

Ω


死者に鎮魂、生者に支援

2016-12-28 08:24:19 | 日記

2016年12月28日(水)

 朝7時台のラジオは定時番組を中止し、安倍首相とオバマ大統領のハワイでの書簡朗読を中継している。安倍首相17分、オバマ大統領15分と言ったかな、同時通訳は緊張もあろうし大変だ。日本語と英語は単語を提示する順序がまるで違うから、欧州語間での同時通訳とはまったく異質の非常な苦労がある。それに劣らず大変なのが、言葉の意味を通わせるという作業である。

 同床異夢ということをしきりに思う。戦争はボタンの掛け違いで始まり、戦場の優勝劣敗という掛け違いようのない事実によって進み、戦後にまたボタンの掛け違いが重ねられていく。日米の和解と彼らの言うことが、どのレベルでのどういう和解なのか、和解の土台となるべき実質的なコミュニケーションが成立しているのかと、そこに遡れば心許ない話である。日本(人)とアメリカ(人)はかけ離れた存在でもあり、今でもボタンの掛け違いを続けていないか、双方がそれぞれの「和解」イメージに納得しているに過ぎないのではないか。つまりは未だに同床異夢、それでも解説者らの言うとおり、いずれの指導者も戦争に直接関わらなかった世代に入り、感情を抑えて理念や利害を語れるようになったことは確かに大きい。めでたく過去の話になりつつあることの確認作業かなと、まだ眠い頭で考える。

 日本軍の艦載機が真珠湾からの帰途に墜落し、パイロットが戦死した。彼のためにアメリカ人が碑(いしぶみ)を立てたことに首相の側が触れた。スピーチの中で「寛容」という言葉を6回だか7回だか使ったという。「勇者は勇者を尊ぶ」とも ~ 怪しげな英語で ~ 述べた。勇者たりえず、しかも勇者を演じる他はなかった無辜の数千万にこそ、慰めあれかし。

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 Medecins sans frontieres (国境なき医師団) からニューズレターが届いた。Arigato と朱書され、人々の笑顔の写真が紙面をいっぱいに埋めている。笑顔は良いものだ。黒い人たちの笑顔は白い歯が鮮やかに浮かんで、とりわけ印象的である。

 Merry Christmas!

 

Ω