散日拾遺

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今場所の注目は・・・

2018-11-12 17:34:17 | 日記

2018年11月12日(月)

 毎度のお願いですが、

 顔をむやみに張るということ、力士の面々には是非とも控えてほしい。流れの中でたまたま顔に入るのは致し方ないとして、故意に顔を張るのは禁じ手・反則にせよと言いたいぐらいだ。横ビンタを張るという行為は、相手を侮辱しメンツを潰すという明瞭な心理社会的意味をもっている。それが国技の土俵上で連日公然と行われるなど、情けないことこのうえない。武道なのか、ケンカなのか、以上はモラルもしくは美学の問題。

 のみならず、

 張り手はスポーツ力学的にも合理性を欠く。相撲の根本は低い腰の備えから押し上げ、相手の体を浮かすところにある。下から上へが突き押しの原則。これに対して、立ち合いに手を伸ばして顔を張りに行く動作は、自分の重心を高くし脇を甘くする結果を必然的に生じるから、冷静に対応されたらかえって不利を招く性質のものだ。ただ、顔を張られると反射的に突進が止まるのは力士といえども避けがたく、その神経心理学的な(?)利得が力学的なマイナスを上回るという裏技性が張り手の正体である。要するに姑息で下品な小細工だが、それで楽することを覚えると下品でもやめられなくなる。記録的にはずば抜けて史上一位の大横綱がいつになっても張り手をやめない、誰もこれをやめさせない、ああイヤだイヤだ・・・

 などと嘆いていましたら、

 小結・貴景勝。貴乃花部屋の閉鎖と千賀ノ浦部屋への移籍という落ち着かない状況の中で、初日に稀勢の里、二日目に豪栄道を破って一躍脚光。結果よりも、その内容に注目したい。初日は稀勢の里が一度、二度と張りにきた。先場所までは、貴景勝自身が腕を振り回してビンタを張る下品の筆頭、張られるとカッとなって張り返すのが落ちだったのに、この日は違う。相手の小細工にお構いなく丸い体をさらに丸めて押しに押し、最後は横からの「いなし」一発で横綱を土俵に這わせた。二日目は豪栄道が立ち合いに左から張りに行ったが、短躯の貴景勝が低く出てくる肩の上で見事に空振り、逆に左からの強烈な「いなし」でこれまた突き落としの勝ち。

 顔を張るのをやめ肩口あたりを「いなす」ことを覚えた小結が、性懲りもなく顔を張りに来る横綱・大関を連覇する図が痛快である。昔から四つ相撲ファンで押し相撲に惹かれるところがあまりなかったが、今場所の貴景勝は見守りたい。相手が何をしてこようが動じることなく、低く出てひたすら押し、動き回り、機を見ていなす。誠実愚直な相撲ぶりが、15日間貫徹されることを祈る。

http://www.sumo.or.jp/ResultRikishiData/profile/3582/ より拝借

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