プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

現代の神話

2011-05-11 12:19:34 | 震災や原発に関連する事
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Taro
 今日は福井・高浜1泊2日シーカヤック&グルメツアーの予定だったんだけど、悪天候により中止としたので、ちょっとしばらく手が回らなかったブログをダーっとアップさせてもらっています。窓の外ではゴーっと風が鳴ってます。やっぱり風、強いですね。

 さて、高浜の海岸ってひなびた風情があって、さらに洞窟や断崖絶壁のワイルドな場所が目白押しで、しかも時折イルカも現れてカヤックの横を伴走してくれるという、大好きなフィールドなのですが、一方、原発もあるんですよね。

 上から二番目の写真がちょうど、シーカヤック上から見た高浜原発です。ぼくは本州、四国、九州、北海道の全海岸線を漕いだ経験があるから必然的に日本の全原発を海から見ていることになるわけですが、そこに身を置くと、なかなかシュールというか、不気味というか、心と身体の奥底から独特のえも言われぬ感情・感覚が湧き上がってくるものです。

 また同時に、原発ってものすごく美しかったり、絶景だったりする場所のすぐ近くに立てられていることが多いという特徴もあります。この上から3番目の写真はちょうど高浜原発の近くの「音海断崖」というなかなか見事な断崖絶壁なのですが、こういうところの際キワを漕いでいると、えも言われぬ神々しい感情・感覚が湧き上がってきます。

 で、つまりはその場に身をおいていると、その両方のえもいえぬ感情、感覚が自分の中で微妙にクロスしたりするってことなのですが、それが非常に気色悪いというか奇妙な気持ち・・・、誤解を恐れずに言うとある種の神秘めいた感覚が心の深いところからにじみ出てきます。そして、心の中で両者がクロスすることをなんとか抗おうとする意識が生まれます。似て非なるものというか、「原発の不気味さなんかと自然の神々しさを感じる俺の感性が交じり合ってたまるか」、というきわめて人間的な感情、理性ってやつです。意識の上ではクロスしないのですが、就寝中夢の中で無意識にクロスするような感じになるときがあります。人類滅亡、世界の終わりのようなとんでもない悪夢を見てしまう、ということがその現われでした。日本一周シーカヤックジャーニーの最中に、そんなことがぼくには何度かありました。

 また、興味深いことに、そういう場所は縄文時代には神が祭られていた聖地だったりもします。
 言い換えると、
 自然と共生した縄文人はそこに「神」を奉り、
 自然から搾取しまくる現代人はそこに「原発」を奉る、
 神話的な深層心理の現れなのかもしれません、
 非常に象徴的なものが見えてきます。
 
 先史時代の神話と、現代の神話。
 ほんとに象徴的だよね。もちろん気味悪いもんだよ。

 で、そういうことを考えてるとなぜか岡本太郎のことを思い出すのです。
 やはりあのひとはとんでもなくすごい芸術家だったぜ、と。
 
 ほら、「芸術は爆発だー」と彼は言っていましたが、
 ある意味あれは、原爆や原発の象徴です(ややこしいがもっと厳密に言うとそれらが象徴するものの象徴)。
 また縄文時代の土器の価値を戦後最初に見出したのはほかならぬ岡本太郎で、
 そいつに影響を受けた神話的象徴があの「太陽の塔」(写真上から4番目)ってやつだったのです。

 つまり現代というものの本質と人間精神の本質とをふかーいところまで見抜き、
 原爆や原発が象徴するものに取って代わる、新しい価値を作り出そうとした。
 それが岡本太郎の芸術世界観なのです。ぼくはそう思います。心の中でギリギリのスレスレまで危ないところまで行き、そこから表現しているわけです。アートって小洒落たものだと思われがちだけど、こういうのが本物なんだと思います。

 岡本太郎って芸術家であると同時にかなり優れた人類学者でもあったわけだけれど、例えばこんな本を読むとぼくの言っていることがよく分かると思います。http://homepage3.nifty.com/creole/taro.htm

 なお余談だけど、太陽の塔と同じく高度成長期のシンボルとされた「鉄腕アトム」ってのが、原子力に象徴される科学進歩の輝かしい側面を描いたアニメだとすれば、同時代に作られた「妖怪人間ベム」ってのはその裏暗部を描いた作品だとも言えます。
 覚えている人は、両者のテーマソングを歌ってみてください。
 A 「空を越えてラララ星のかなた、ゆくぞアトム、ジェットの限り、心やさし、ラララ科学の子~、10万馬力だ鉄腕アトム」
 B 「闇に隠れて生きる、俺たちゃ妖怪人間なのさ。人に姿を見せられぬ、獣のようなこの体、早く人間になりた~い。暗いさだめを吹き飛ばせ、ベム・ベラ・ベロ~、ようかいにーんげん」
 ぼくは妖怪人間ベムのほうが奇麗事じゃないので好きだ。


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知らなさ過ぎること

2011-05-11 09:57:56 | 震災や原発に関連する事
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 前回から少し間隔空きましたが、神島でのゴミイベント以来しばし考えていることは、いったい福島原発が垂れ流す放射能汚染水がどこに行くのかということだ。

 太平洋やインド洋、大西洋といった大洋には、「還流」という大きな渦のような流れがある。太平洋でのそれはちょうどハワイ沖くらいの場所にあり、「北太平洋還流」と呼ばれる世界最大のものだ。前回のイベント記事でも書いたように、ちょうどそこに「太平洋ゴミベルト地帯」というものが形成されており、テキサス州の二倍とも、あるいはアメリカ大陸と同面積とも、はたまた日本の四倍にも相当する範囲に渡って、大量のゴミが溜まっているといわれている。
 
 ゴミの80%以上は陸地から起因するものだ。
 ちょうど「ミッドウェー」あたりが還流の中心になるらしく、そこではおびただしいゴミが散乱する状態であり、その「あまりにもすさまじいゴミの実態を見に行く」という名目のエコツアーのために、近年観光客にも開放されているらしい。ゴミを見ると英語のものもそうだが、さらに日本語、韓国語、中国語といったアジア系出自のラベルの入ったプラスティックゴミが圧倒的に多いようだ。
 太平洋岸の陸地で捨てられたゴミは6~7年くらいかけて太平洋ゴミベルトに集まってくるという報告がある。

 この「ゴミ」を「放射能」に置き換えると・・・・。
 いや、ゴミプラス放射能だ。
 
 いまだにぼくの心の中で尾を引いている、神島のイベントで皆さんから引き出せなかった感想ってのは実はこのあたりのことなのですが、さて、ではこのブログを読んでいるあなたはどう思われますか?

 海とか波とか風とか、そういうプラネットアースの循環器的な自然現象ってのは、完全に国境を越えている。さらに海水ってものは2000年くらいかけて全世界を一周すると言われている。また、あまり言われないけれど最もやばいプルトニウムの半減期は2万4000年である。そいつを考えると・・・、千年万年に及ぶとんでもない大犯罪ってことになる。昔、内田裕也が出演した「魚からダイオキシン」という映画があったが、そいつも「魚からプルトニウム&ストロンチウム」と比べたらかわいいもんだ。

 たった一世代、自分たちのためだけに、
 未来永劫に渡る重い問題を生み出し続けるのがこの便利な「現代生活」ってやつで、
 その深層心理的・神話的シンボルが「原発」なのかもしれない。
 そしてへヴィーな問題に無関心だった罪のシンボルが原発事故。
 色々考えさせられるね。 

 「そんな難しいこと考える暇がない」「知らんものはしゃあない」
 というのがわれわれ現代人のスタンスだけれど、数百年後の子孫には「便利な生活を満喫するんだったら、最低限知っとくのが義務じゃアホンダラ世代め」と言われちゃうことだろう。いずれにせよ今生きてる我々は団塊の世代もアラフォーもアラサーも草食系も肉食系もみな等しく「無知で無関心で欲どおしい迷える蛮人だった」と、未来世代から揶揄されるのは間違いない。

 そしてぼくらは海をことを知らなさすぎる。

※ミッドウェーとゴミの関係についての参照記事はこちら
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_18_01.html
※太平洋ゴミベルトについてのナショナル・ジオグラフィック誌の案内についてはこちら
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=68541809&expand


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