線路を走るものに、汽車、電車、ディーゼル車、そして客車、貨車、列車などがあり、俳句ではどれを選択するか、定型に収めるのに悩むことがある。
さてこの句、多分廃線になりそうな田舎の単線路を、一両の電車、実際は多分ディーゼル車であろう、がゆらゆら走っている。電車そのものが揺らめいているのだろうし、蜃気楼のように大地が暖められ、空気が膨張し光の屈折によっても揺らめいているのであろう。
この雲と電車が語っているという。「語りけり」と断定されると、「何を語っているんでしょう」と真剣に考えさせるところが、この句の面白いところ。語るはずがないがないじゃないか、などと言ったら身も蓋もありません。
ミント