この句、作者は「五月雨」「熊本城」「天守閣」という名詞を、助詞の「や」と「の」でつないだだけである。副詞も形容詞も動詞もない。作者の感情や理屈など一切の修飾や説明がない。
しかし、読み手である我々は、数年前熊本地震があり、熊本城が大きな被害を受け、最近ようやく天守閣の修復が終了したのをニュースで観て知っている。作者が、その復旧した天守閣を仰いで、熊本市民の安堵の気持ちや加藤清正の築いた城の歴史などに思いを馳せたであろうことが、想像されるのである。そして、修理された屋根に、滂沱たる五月雨が降っている。
6年前の2016年4月、熊本地震が発生した。震度7が1回、6強が2回、6弱が3回。計測震度は、東日本大震災(6,6)を上回り、熊本は(6,7)だった。関連死を含めて273人が亡くなっている。負傷者2800人、避難者18万人。被害額4.6兆円という大災害だった。
俳句は、短詩であり省略の文学と言われるが、この句のように作者の言わんとすることを具体的な物だけを提示して、読者にその投げかける。これが俳句の原点なのだ。
タツナミソウ(立浪草)