卍の城物語

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2009-01-26 23:33:22 | 映画
映画100選。第16回。

2001年作品。ドイツ映画。
原題「Das Experiment」

監督・製作総指揮・オリヴァー・ヒルシュビーゲル
脚本・ ドン・ボーリンガー、クリストフ・ダルンスタット、マリオ・ジョルダーノ
出演・モーリッツ・ブライブトロイ、クリスチャン・ベルケル、オリヴァー・ストコウスキ

~ストーリー~
新聞広告によって募集された24人の男達は、大学の地下に造られた擬似監獄で、囚人と看守の役に成り切り、二週間どのように過ごすかという心理実験に参加する。元記者の主人公も、潜入取材をすることで多額の報酬を貰おうと参加した。
最初の内はお互いにからかいあうなど和やかな雰囲気であったが、時が立つに連れ看守役は囚人を支配出来る権力を横行させ、囚人はただひたすら従順になっていく。
そして看守役達の横暴は一気にエスカレートしていき、遂には最悪な事態に発展していく・・・。

この物語の元ネタは、スタンフォード監獄実験によるものである。
スタンフォード監獄実験とは、1971年にアメリカ・スタンフォード大学心理学部で、心理学者フィリップ・ジンバルドーの指導の下に、刑務所を舞台にして、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験の事である。
実際のスタンフォード監獄実験では最悪な状況には至っていないが、本作の映画と同じく、看守役は禁止されていた暴力まで行い、囚人に罰を与えようとした例もあった。
そして肝心の心理学者のジンバルドーが理性を失い、実験に快感を覚え、危険な状態になるまで中止もせずに、実験を観賞していた。
結局、関係者が危険を感じ、被験者の家族達とともに実験の中止を訴え、二週間の予定が6日間で中止となる。
この実験は人権問題として裁判沙汰になり、未だに係争中らしい。その為、実験が行われたアメリカではこの「es」が上映出来なかったとの事である。

この映画では、スタンフォード監獄実験が、もしも、色々な偶然が重なり、危険な状態にも関わらず、実験が続いたとしたらというのが元にある。
かといってフィクションとは全く思えない、リアリティに満ちた内容になっている。

法律や宗教、道徳や倫理というものを身に付け、社会で生きていた普通の人々が、看守と囚人という異常な状況に陥ると、看守役は人をコントロールする支配欲が生まれ、囚人役は従順な奴隷と化してしまう。
今もって、訳の分からん生物の人間だが、一皮捲るとタダのケダモノというこの悲しくも恐ろしい事実は受け止めなければならない。
この映画や、元のスタンフォード実験も、貴重な失敗実験として心理学に活用して欲しいと思うのだが、この状況と言うのは実際の監獄にも起こっているだろうし、戦時下の収容所となったら、さぞ陰惨極まりないものだろうと推測できる。

さて、この恐ろしい映画に少し文句を付けなければならないのである。それは女の存在なのだが、女は居なくても映画全体に何ら問題は起きないと思うし、最近出会った女という設定よりは、昔の彼女とかにしたほうが断然良いと思う。監獄と一般社会のギャップを描きたかったのか、ハリウッド的なお馴染みの手法かは知らんが、女の存在は結構邪魔に感じた。

この監獄実験は一概には否定出来ない。実際同じ状況に立たされたら一体どうなってしまうだろうか。
看守役になったら・・・、人をあらゆる手段で支配しようとしてしまうのか?
囚人役になったら・・・、靴の裏を舐めてまで生に執着するのか?それともプライドを守って逆らって死ぬのか?
SMという性癖どころではない、人間の深層心理が暴かれる現実が、そこかしこに潜んでいるのかもしれない。そんな事を考えてしまう傑作映画です。

オススメ度(映画評価)・☆☆☆☆

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBありがと~。 (うりえる)
2009-01-27 06:39:36
「es」は怖かったですね。
「13日の金曜日」とか「ラストサマー」みたいないかにも驚かすぞっていうホラー系とは違った心の底を捕まえるような恐怖が残る感じです。

映画としてはかなりの傑作なのですが、怖さから2度とみたくないです。

ちょっとヒッチコックに近い感じもします。

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無類の恐怖映画好き吉田栄作 (マーズれい郎 )
2009-01-28 01:04:38
うりえるサンコメントありがとうございます!
ブログに立ち寄らせて頂き、更にトラックバックで失礼しました。

個人的にはビックリ系やグロテスクな恐怖は嫌いで、人間の狂気が描かれているリアリズムのあるサスペンスホラーは大好きです。

前に一度観たのですが、また観直しましたが、やはりこの映画は面白いです。というか恐過ぎですね。

また気が向いたら当ブログに遊びに来て下さい♪
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