現在でも、私が洋梨に限らずこれら果物を買って来るのは特売されている時に限られます。洋梨は大きさが大振りになった気がします。輸入物かもしれません。私が買っていた学生時代当時の物は小振りで可愛い感じでした。日本の気候風土の違いで小振りに育ったのかもしれません。味も多分に向こうで食べる物とは違っていたのでしょう。最近食べましたが、昔の味とは違って粘度は軽めで、柔らかい中にもサクサク感が増していたように感じました。
『特売か…』と思い、未だに特売でないと買ってこない自分に苦笑してしまいます。私って昔から値の安い物を買うのに抵抗感が無いんですよね。値の下がった物と言うか。めったに定価でこういった果物を買って来る事がありません。定価で、しかも値段に糸目を付けずに買う時は進物用です。最近では母に差し入れする時がそうです。安価な果物を買いつつ、時に季節の物は数量少なく値の張る物を持参したりします。余談でした。
学生時代からこんな私でしたから、駅からの帰り道、下宿に向かう途中にあるこの八百屋さんの前を通る時は、今日は如何だろうかと果物の値下がりを目ざとく見つけ、時には裕福に?2、3個という個数を買うことも有りました。それは主にりんごでした。本筋の洋梨の方は、最初の年には気付くのが遅く、1度くらいしか買えなかったかもしれません。翌年の秋になり、また洋梨が店頭に並ぶようになるまで、実は私は心密かに待ち望んでいたのです、1年という歳月の過ぎるのをです。
1年が過ぎ、最初に洋梨を見かけた時候になると、私はそれとなく八百屋さんの店頭を覗き込み何気なく通り過ぎる日が多くなりました。賄い付きの下宿にいた私には、野菜類を買い出すという必要が有りません。それで八百屋さんとは全く顔馴染みになっていませんでした。私にしても普段は気にも留めずに通り過ぎるお店の前の道でした。
そして、遂にある日私は店頭に洋梨を発見して、おおと目を輝かせました。透かさずその値段を見て、その値が思ったよりも相当に高かった事に非常に驚きました。『これは買えないな。』と、がっくり。1年前に98円で買えた事が珍しい事だったのだと感じる程の、高額なお値段でした。多分2、3倍以上に高いお値段でした、当時の洋梨は高級果物ですね。
今年は値上がりしたのだろうかとか、それでも特売になるとあの値段になるのだろうかとか、私はあれこれと昨年今年と洋梨の事を思い浮かべては、数日うろうろと狼狽えていました。到頭、今年は口に入らない物なのかもしれないと、毎日通る店頭の洋梨の値に影ながら溜息を吐いてしまいました。