私は直立した感じで両手を伸ばし拳を握り締めていました。顔も怒りの形相でしたから、次には手が出て相手の頬でも殴るような私の雰囲気に、向こうは顔を背けると拳を防ぐように頬に腕を上げました。しかし私が何もしなかったので、相手は一寸拍子抜けした感じで如何したのかと問い掛けて来ました。自分が嘘つきってどういう事なのかと尋ねて来ます。
「お父さんに嘘ついたでしょう。」
誰が?、あなたが、誰のお父さんに?、私のよ、何時?、昨日、等と、何時もは名前で呼んで仲良く遊んでいた相手なのに、私があなた呼ばわりまでして話をすると、
「そんな事言ってないけど。」
と、向こうの方も話し方を素っ気なく変えて、私嘘なんかついていないと主張するのです。
相手は何だか考え事をしながら話しているらしく、話す言葉は半ば心ここにあらずの頼りない返事の仕方や内容になっていました。それで私の方では真面目に私の話に付き合う事もしないような、この子はとてもいい加減な子なのだと判断しました。そうして益々腹が立ってくるのでした。
私の内面に昨日父から言われた謂れの無い言葉への怒りがふつふつと湧いて来ます。この子のせいで私は悪い子だと父に思われているのだ。
「嘘つきとは遊ばない。」
あなたなんて大嫌い、嘘つき!。そう言い放つと、その後も相手を散々嘘つき呼ばわりして大嫌いだと叫びました。