Jun日記(さと さとみの世界)

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うの華3 19

2020-07-27 11:20:14 | 日記
 私は頭を持ち上げて父の顔色を窺った。すると、そんな私に父は同様に、自分を見詰める子である私の顔色を窺っている。そうして、私の目にある程度の好奇心の色を認めたのだろう、父はその場に立ち止まると、果たして私の予想通りに、ここで喜怒哀楽につての解説を始めた。

 父は喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、そんな言葉を次々に並べ立てると、喜怒哀楽とはそれらの事だよと説いた。人の感情は大体この4つだと父が説明を終えてから、分かったかと私に問うので、先程からの彼の言葉を一言漏らさず聞いていたと思っている私は、もう1つの感情は?、他にもあるとさっき言っていた物は何なのかと問うてみた。

 すると父は、一瞬仕舞ったという様な、困惑の表情を顔に浮かべた。が、直ぐに平然とした父親の顔に戻った。そうして、頬に緊張感を走らせると、今はその感情はお前には分からないだろう。ぽそぽそと、半ば心此処に非ずの態でいうと、「説明しても多分お前には分からないんじゃないかな。」と、苦しそうに、呟くように付け足した。

 私はその直線的な彼の頬の張り具合を目ざとく見詰めた。ここに何らかの彼の誤魔化しの匂いを感じる取ると、彼の私という自分の子に追い詰められた状況を読み取った。しかしこの時の私は何時もの私がする様に、そのままどんどんと問い詰めて深く彼を追求するという事をしなかった。彼も困るのだろう。この時期そんな事を薄々考える様に私は成っていた。何故なら、この頃の私が疑問をぶつける相手は、もう父や家内の家族に留まっていなかったからだ。

 家族なら、家の尊敬される大人という体面も有ったのだろう。が、それに反して、外の大人は他所の子に対しては案外無防備だった。無理に尊敬など勝ち取ろうとは思わないのだ。私達子供に対して体面もへったくれも無い。他所の子供から尊敬や敬愛の念を勝ち取ろう、その思いを保持し続けよう、…なんてそう強くは思わないのだ。

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