「私嘘なんかついてないよ。」
相手はそう言うと、不思議そうな顔をして私が散々罵倒する言葉を黙って聞き流していました。如何にも怪訝で訳が分からないという相手の顔つきや、私を見詰める物言いたそうな口元に、1人で怒鳴っていた私は言いたい事を言って少し気が晴れたので、向こうの言い分を聞こうかと言葉を切りました。
私は相手が何かを言いたいのだと思ったので、「何か言いたいなら言えば。」と言うと、黙って聞き役に回り向こうの言葉を待ち受けていました。すると急に向こうは相好を崩してシュンとした顔になり、肩を落とすとわーんとばかりに声に出して泣き出してしまいました。その後泣きながら意地悪と言うと、相手はその儘、特に私に向かって何か言葉を言う事も無く、只うわーんとばかりに声を上げて泣きながら踵を返すと、ばたばたと泣き声を上げて家へと向かって走り出して行ってしまいました。遠くなって行く泣き声が向こうの通りからも響いて来て、相手の子が帰って行く道筋を示していました。
相手の子の言い分を待っていた私は、拍子抜けした感じで呆気にとられ、その子のそんな後ろ姿や鳴き声をその場で見送っていました。待っていたのに返事が無かった事で、私はまた相手への怒りが再熱して来ました。両手の拳を握り締めた儘、その場に暫く佇んだ儘でいました。
あの子とは昨日迄はあんなに仲良しだったのに、私はそう思うと気持ちが沈んで、蝶取りへの遊び心が削がれてしまいました。私は空き地を見やりました。何事も無かったように蝶が2、3白い色を浮かべていました。
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