さて、翌日の事、「皆外へ遊びに行ったそうだ。お前も昨日の施設に行って遊んでおいで。」「もう皆出掛けたそうだよ。」そんな事を母に言われて、私は体よく戸外へ追い出されてしまいました。
この時、私は母の物言いが普段と違うように感じられ、何となく不審に思った物でした。それに、普段は遊び仲間の誘いに乗ってから出掛けるので、彼等から誘われずに、また、自分自身が行こうと思って外へ遊びに出て行くというような、自発的な外出で無い事もその時が初めてといってよい事でした。
『何だかいつもと違うわ。』そんな事を思いながら、いつも気候の良い時期に遊ぶ施設へとやって来ました。
「それに、…」
と私は呟きました。昨日の施設と言わなくても、これまで何回もこの時期に遊びに来ている場所なのだから、「施設」とだけ言えば分かる事なのに、とやはり母の対応が妙に感じられます。首をひねりながら道を進んでいくと、昨日迎えに来た母と出会った場所迄やって来ました。するとからりと脇の建物の障子戸が開きました。私が思わず窓辺を見上げると、
「おや、」
窓には昨日の婦人がいて、意外そうに声を出しました。「昨日のお嬢さんじゃないの。そうでしょう。」と声をかけられました。そして彼女は一寸放心したような顔付になると、私に向かって静かに話し始めました。
「あなた、どうして昨日は、ここにあの人を1人で置いて帰ってしまったの?」
あの人?私は誰の事だろうと思いましたが、多分、母の事だろうと感じるのでした。
「お陰でこっちは長い事あの人のお守りで大変だったのよ。」
守代が欲しいくらいだわね。と、婦人はぼやきました。
続いて彼女はしゃんとすると、如何にも上品な語り口で再び私に問い掛けて来ます。
「何故、昨日あの人1人残して帰ったの?」「無責任ね。あなたは。」
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