・カラヴァッジョ《バッカス》
カカラヴァッジョ《バッカス》(1597-98年頃)ウフィッツィ美術館
この《バッカス》を何度か私用の年賀状に使ったことがある。見るからに酔っぱらったようなとろんとした目でこちらに向けてワインのグラスを差し出す《バッカス》の、ぽってりと丸みを帯びた体躯や髷を飾る蔦の葉に果物の色彩に、なにやら豊饒なる目出度さを覚えてしまうからだ。たとえバッカスが白いシーツを身に纏い、安っぽいクッションを背にあてがい、器に盛られた果物が朽色を晒していても、その安っぽさまでが小憎らしくも面白い。酒臭さを画面にまき散らし、酔った手でリボンを解くつもりか、その身を差し出そうとするしぐさまでも観る者を思わずニヤリとさせるものがある(笑)。例えば《勝ち誇るアモル》と同じように…(^^;
さて、図録を読むと、ミーナ・グレゴーリは人物表現、静物表現のいずれにおいてもブレーシャ派の影響を指摘しているようだ。「モレットの描いたブレーシャのサンタンドレア聖堂の果物籠や、同じくモレットが描いた《ノアの泥酔》(個人蔵)に描かれたブドウの表現と本作を比較してほしい」と。
ということで、さっそく比較してみた。で、ツッコミごめんね(^^;。サンタンドレア聖堂はブレーシャではなく「ベルガモの」じゃないだろうか??
モレットは本名アレッサンドロ・ボンヴィチーノ(Alessandro Bonvicino, detto il Moretto , 1498年 -1554年)、ブレーシャ派の画家である。要するに、カラヴァッジョに先行する「ロンバルディアの画家たち」の一人だ。
モレット《玉座の聖母子と聖アンデレ、聖人たち(Madonna in trono col Bambino tra i santi Eusebia, Andrea, Domno e Domneone)》(1536-1537頃)サンタンドレア聖堂(ベルガモ)
モレット《玉座の聖母子》果物部分の拡大
カラヴァッジョ《バッカス》果物部分の拡大
モレット《ノアの泥酔(Ebbrezza di Noè)》(1521-1528頃)個人蔵(ビエッラ)
モレット《ノアの泥酔》ツタ部分の拡大
カラヴァッジョ《バッカス》ツタ部分の拡大
確かに、言われれば「そうかも」と思ってしまうが、ミラノにもアルチンボルドやフィジーノなどの静物画の系譜がある。そして、ベルガモはカラヴァッジョ村からも近いのだ。
カラヴァッジョ駅近くの道標。
ということで、まだまだ感想文は続きます(^^;;;