昨日はナタリー・デセイのコンサート。今日はヨーヨー・マのドキュメンタリーを
見て音楽を超えた映画に圧倒された。最近見たドキュメンタリー 「海は燃えている」
「Devid Bowie is」をはるかに上回る感動だった。
圧倒的な感動。音楽もそれぞれの行き方も。時代の流れに翻弄される人々。音楽は何ができるかを追求する人たち。
シリアの難民キャンプで寒さでなくなっていく人達。難民にかける予算が削減されると命にすぐ響く。
文化大革命やイランの2度の革命に引き裂かれてしまうケマンチェ奏者のエピソードが心に深く刺さった。国から逃げて
最終的にアメリカでの活動にたどりつくのだけれど、国では有名でもアメリカでは民族楽器について
理解もなく、大変な苦労を重ねる。一度平和が訪れて故郷に戻り、音楽教育に注いでも暴力を肯定する
国のやり方と合わなくなり、活動も狭められていき、音楽を人質にとられてまで活動したくないと再び
海外へ逃れる。家族は殺されたと。パートナーは国に残り、スカイプで話をして、何年に一度か国外で
会う生活。シリアの音楽家も「ほかの国の人たちにとっては『シリアのことなんか知るか』でしょう」と。
中国の琵琶の演奏家とスペイン、ガルシアのバグパイプの演奏家も深い印象。
世界には東も西もない円、グローブ、グローバルと語る彼女に同感。中国人の彼女は世界で活躍するが中国に行くと
アメリカ人と言われ、アメリカでは中国人と言われると・・
9.11以降ひげを生やしているだけで、いやな目で見られたというシルクロードの演奏者たち。ヨーヨー・マ自身も
パリで生まれた中国人で国籍はアメリカ。アイデンティを求めて結成したとも言われるシルクロード・アンサンブル。
言葉が通じなくても音楽という言葉は通じる。またその民族楽器の演奏が生きていて素晴らしい。はじけてるというのは
このことと思えるくらい。
これほどまでに今の時代、世界を表している映画はないと思う。
最後にヨーヨーマが話す、T.S.エリオットの詩がすごく印象的だった。音楽の探究をやめないと。
探究して最後にたどりつくのが、スタート地点。でもそこは初めて見る場所。
なんともすごい詩。探したらFBで足立正治さんという人が引用していてくれました。
「映画は、ヨーヨー・マを中心に結成されたシルクロード・アンサンブルのメンバー一人ひとりの多様な民族的、
文化的、政治的な背景を浮き彫りにし、音楽活動を通して自身のアイデンティティを確立していく過程を追う
ドキュメンタリーですが、期待をはるかに越える迫力と重厚さをもって描かれていました。なによりも、そうした
多様性を融合して生み出される響きに最初から最後まで圧倒されました。そして、映画の終盤でヨーヨー・マが
芸術活動をとおした自己探求の過程を振り返るのに、T.S.エリオットの「四つの四重奏」の一節を引用している
のですが、それがぼくも何度か引用したことのある個所だったので、感慨もひとしおでした。
We shall not cease from exploration
And the end of all our exploring
Will be to arrive where we started
And know the place for the first time.」
今回の映画では知らない民族楽器の奏者が多かったためパンフレットを買ったら
洋画家入江一子さんのコメントが出ていてビックリした。100歳だって。
かつてK建設の絵画クラブに潜り込んでいた時に建設会社の大手の絵画クラブの合同活動があって
スケッチハイクに行ったりいろいろあって、入江先生には何回かお会いしたことがある。
大成建設には岡本半三という方が指導に当たっていた。シャイなかわいい人で、そのころは
舞妓さんの横顔なんか書かれて出品されていた。古茂田先生はだいぶ前に亡くなられけど
懐かしく思い出しました。
Bunkamuraでの公開が明日で終了。午前1回しかないので、急遽休暇を取って行ったけれど
それだけする価値のある映画でした。こういう映画は次どこでやるかわからないから、よかったわ。
たくさんの人が来て、チケット売り場で列ができて間に合うかと思ったくらい。