やっと、今月分のサブスクで借りたキアロスタミ監督の『桜桃の味』と『トスカーナの贋作』を二日続けて見る時間が取れました。
いつも月の後半になってやっと2作見れる次第。月4作品は見れるのですが、見れなかった分はいつも翌月までは繰り越せるので
たまってしまって流してしまったり・・・そろそろストップしないといけませんが、見たい映画を見てしまってからに・・
映画.com より
キアロスタミ監督はヴィクトル・エリセ、エルマンノ・オルミ、テオ・アンゲロプロス、タルコフスキーなどと同じように
若いころから注目の映画監督でしたが、映画を見たことがなくて、やっと借りてきたDVDで見ることができました。
「友だちのうちはどこ」に続いて・・・
桜桃の味
Taste of Cherry (1997) | best part | Abbas Kiarostami
Trailer for "Taste of Cherry"
Taste of Cherry - 1997 Trailer
桜桃の味
Taste of Cherry
1997年製作/99分/イラン・フランス合作
監督・脚本・製作・編集:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
録音:ジャハンギール・ミルシェカリ、モハマッド・レザ・デルパック
助監督:ハッサン・イェキタ、バフマン・キアロスタミ
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ、アリ・モラディ、ホセイン・ヌーリ
この映画も説明が少なく、また謎解きのように映画は始まります。人材を探しているようなのだけど・・どんな立場の人なの
だろうとミステリアスです。一人一人車に乗せて、仕事の内容を説明しているうちに、なんと自分の自殺幇助をする人を探していた
ことがわかります。乗せた人は兵士だったり、神学生だったり、自然博物館で働く人だったりします。人種もアフガン人だったり
クルド人、トルコ人だったりして、中央アジアと中東がとても近く、交流があることがよくわかります。
乗せた人は心は使わずに手だけ使ってくれればいいと言われても殺人の手助けなどできるような人ではなく逃げ出してしまいます。
最後の自然博物館で働く老人は助けるのだったら正しく助けたいと自分の経験を少しずつ話し出します。
そのパゲリという老人のぼそぼそと話し出す話と車が走る景色が黄金色に変わっていくところなど、映像も素晴らしかったです。
どんな悩みにも解決法は必ずあると、老人も若い頃に自殺を図ろうとしたときのことを語り始めます。首を吊ろうとした桑の木の実が
おいしくて、死をどこかに置いてきてしまったと。太陽と緑の美しさと・・・ 桑の実が命を救ってくれた・・自分が変わり、生きる
限り悩みはあると悟った。見方を変えれば世界は変わると・・
感動的は老人の言葉・・
希望はないのか?
朝起きた時、空を見たことはないのかね?
夜明けの太陽を見たいと思わないかね?
赤と黄に染まった夕焼け空をもう一度見たいと思わないか?
車は黄金色に染まった美しい景色の中を走り抜けて行きます。
さらに続ける老人
月はどうか?
星空を見たくないのか?
夜空にぽっかり浮かんだ満月を見たくない?
目を閉じてしまうのか?
あの世から見に来たいほど、美しい世界なのに
あんたはあの世に行きたいのか?
もう一度泉の水を飲みたくないのかね?
泉の水で顔を洗いたくないのかね?
自然にある四季と果物
どんなに子供を愛する母親も神にはかなわない
それほど神は人を慈しんでいる
すべてをあきらめてしまうのか?
桜桃の味をわすれてしまうのか?
かすかな希望が生まれてきたことが、主人公の眺める青空に伸びて行く飛行機雲や子供たちが走っている風景が
彼の心を投影しているように思えます。
ターナーの絵のように沈む太陽、黒猫が横切り、彼に生きる希望が湧き上がってくるのがわかります。
それでも自殺を決行しようと夜中に穴に向かう主人公。上を見上げれば月を時々隠しながら雲が流れ、
遠くに雷の音や雨の音・・
そして意表を突く全く違うシーンのラストで映画は終わります。けだるいSummer Timeの音楽と共に。
映画は結論を語りませんが、それぞれが思うような結論を描けばいいのです。私はもちろん再生を想いました。
アッバス・キアロスタミの映画『桜桃の味』(1997)を哲学的に考える
【桜桃の味】アッバス・キアロスタミ死去・・・そして僕の一番好きな映画
GINZA MAISON HERMÈS Le Studio 『桜桃の味』Taste of Cherry
トスカーナの贋作
トスカーナの贋作
Copie conforme
2010年製作/106分/フランス・イタリア合作
監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ/マスメ・ラヒジ(脚色)
製作:マラン・カルミッツ シャルル・ジリベール アンジェロ・バルバガッロ
撮影:ルカ・ビガッツィ
編集:バフマン・キアロスタミ
出演:ジュリエット・ビノシュ(彼女)
ウィリアム・シメル(ジェームズ)
ジャン=クロード・カリエール(広場の男)
アガット・ナタンソン(広場の女)
ジャンナ・ジャンケッティ(カフェの主人)
アドリアン・モア(息子)
映画『トスカーナの贋作』予告編
ジュリエット・ビノシュのために脚本を書いたというキアロスタミ。
これでカンヌ主演女優賞を取ったというのも納得です。
相手役のウィリアム・シメルはバリトンのオペラ歌手で映画出演は初めてとのことでしたが、なかなか大女優相手に
役どころとしてはぴったりでした。
ビノシュは感情を露わにして女性のいやな面もかなり出していましたが、子供に対する苛立ちとかすごくよくわかります。
ロール・ゲームのように進む映画も面白かったです。たまたま出会った作家とギャラリー経営者が長年連れ添った夫婦の
ように感情をぶつけ合います。フェィクですが、ここのタイトルの贋作とほんものがからんでくるのでしょう・・
ここに男と女のオリジナルがあるように・・・
そして芸術についてももちろん贋作・オリジナルの問題が語られ、奥が深い映画のようです。ほんものとは何か?と問いかけて
きます。「単純さは簡単ではない」というセリフも・・
この映画の結末も他のキアロミスタの映画のように想像にまかされます。As you likeのようです。考えさせられるものが
あちこちにちりばめられています。
ビノシュは「存在の絶えられない軽さ」以来好きな女優の1人ですが、ビデオについていたメイキングでのインタビューが
おもしろかったです。メイキングもイタリアのスタッフがキアロスタミと映画を作り上げていく様子がわかり面白かった。
映画を作るのは本当に大変だと思いました。今回の映像スタッフも素晴らしかったです。
ビノシュへのなぜ演じるのかという質問に対して、「魂の探究者として、演技を通して経験することに、生きる喜びを
感じるから」と話していました。確かメリル・ストリープも同じようなことを応えていたことを思い出します。
この映画の主人公とピノシュも違うところがあってなかなか理解に苦しんだところもあったとか・・ 例えば噴水の彫刻が
男性に後ろから寄りかかるところで、自分は前に出ていたいし寄りかかりたくないようなことを話していました。あの彫刻は
監督がわざわざ噴水と一緒に作ってセットしたとのことで、男性的な考えが出ていたのかな?
DVDを借りるとメイキングのことが時々見れて興味深いです。
ABBAS KIAROSTAMI INTERVIEW
「トスカーナの贋作」:ふとしたことから夫婦を演じる男女の虚実の交錯を、イタリアの小さな街を舞台にスリリングに描くヒューマンドラマ
追悼アッバス・キアロスタミ~偉大なイラン人映画作家が〈差異と反復の遊び〉から生産した〈新しいもの〉の行方を再考する
日本で撮った遺作となった作品も見てみたくなりました。
March 26-28 2024
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