碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NHK「ドキュメント20min.」は制作者育成の“道場”

2009年09月07日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

本日発売の『日刊ゲンダイ』(8日付け)。

連載コラム「テレビとはナンだ!」の今週分では、NHKの「ドキュメント20min.」について書いた。

タイトル:
ミニ番組でドキュメンタリーの作り手を育成しているNHK

コラムの本文は、以下の通りです・・・


NHK「ドキュメント20min.(ミニッツ)」が始まったのは今年の6月。若い作り手によるドキュメンタリー枠だ。

第1回は「はじめてのトウキョウ」。看護師を目指して宮崎から上京した20歳の女性に密着していた。

駅の自動改札機にドキドキし、命を預かる仕事に緊張しながらも、徐々に新しい環境に溶け込んでいく様子を描いていた。

この番組では、ディレクター自身がカメラを回し、ほとんどはナレーションも手掛ける。

テーマはもちろん手法も様々で、ピンマイクを自分に付けて実況する者や、取材先に定点観測用の小型カメラを仕込む者もいる。

先週は、一風変わった家族写真を撮り続ける写真家を追っていた。撮影に取り掛かる前に、家族の話をじっくりと聞いて“場面設定”を考えるのだ。

「一家でキャンプ」という設定の中で、祖父と孫娘が笑顔で“和解”する瞬間を写真に納める。

また、病気を抱えた小さな子どもを持つ一家には、病室から見た虹をTシャツに描いてもらい、それを着ての昼寝を撮った。一つ屋根の下で眠るという当たり前のことが、家族の最高の幸せだからだ。

木曜の深夜。20分という限られた時間。

しかし、そういう「場」だからこそ、まだ経験の浅い制作者たちも身構えずに番組を作ることができる。

この小さな“道場”から、NHKが誇るドキュメンタリーの巨匠である吉田直哉や相田洋に続く者が育つかもしれない。


・・・フジテレビ「NONFIX」などは「まだまだ敷居が高い」という若手制作者のために、民放も、こういう“場”を作ってくれたらいいんだけどなあ。