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「うーん、上手いなあ」と思わずつぶやいてしまった。
阿川佐和子さんの文庫新刊『あんな作家 こんな作家 どんな作家』(ちくま文庫)だ。
名だたる作家にインタビューして、エッセイ風の文章にまとめる。
これ、なかなか難しい仕事ですよね。
読者って欲張りだから、その人の“人となり”と作品についてはもちろん、過去から現在(書いた時点での)までの軌跡や、“ここだけの話”も欲しくなる。
それを短い文章で、それも読ませる文章で仕上げるのだ。
ベースにあるのは、相手を構えさせず、媚びず、また慇懃にならずという、やっぱり阿川さんの“聞く力”です(笑)。
単行本が講談社から出たのは1992年。
60名近い作家が並んでいるが、20年以上が過ぎた今、こうして文庫本で読むと、亡くなった方々も多い。
松本清張、吉村昭、森瑤子、吉行淳之介、遠藤周作、井上ひさし、そして山口洋子も・・・・。
でも、この本の中では阿川さんのペンによって、実在している。
人物像も、肉声も、ここにある。
ありがたくて、ちょっと不思議な感じです。
ところで、ってのもヘンだけど、この本のタイトルが、童謡『汽車ぽっぽ』の歌詞「なんだ坂、こんな坂、なんだ坂、こんな坂」からきた、阿川さんお得意の駄ジャレだってことは、ちゃんと通じているのでしょうか(笑)。
この『汽車ぽっぽ』を作詞・作曲した本居長世は、国学者・本居宣長の、直系じゃないけど子孫だったはず。
余談ですが。
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BSジャパン「金曜オトナイト」で阿川さんと
ということで、今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。
池井戸潤 『銀翼のイカロス』 ダイヤモンド社
佐藤 優 『「知」の読書術』 集英社インターナショナル
北村龍平 『映画監督という生き様』 集英社新書
小澤征爾 『おわらない音楽~私の履歴書』 日本経済新聞出版社
高須基仁 『慶應医学部の闇』 展望社
早瀬利之 『石原莞爾 アメリカが一番恐れた軍師』 双葉新書
* これらの書評は、
発売中の『週刊新潮』(10月2日号)
読書欄に掲載されています。
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