碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

昭和の作家たちに会える、阿川佐和子『あんな作家こんな作家どんな作家』

2014年09月29日 | 書評した本たち



「うーん、上手いなあ」と思わずつぶやいてしまった。

阿川佐和子さんの文庫新刊『あんな作家 こんな作家 どんな作家』(ちくま文庫)だ。

名だたる作家にインタビューして、エッセイ風の文章にまとめる。

これ、なかなか難しい仕事ですよね。

読者って欲張りだから、その人の“人となり”と作品についてはもちろん、過去から現在(書いた時点での)までの軌跡や、“ここだけの話”も欲しくなる。

それを短い文章で、それも読ませる文章で仕上げるのだ。

ベースにあるのは、相手を構えさせず、媚びず、また慇懃にならずという、やっぱり阿川さんの“聞く力”です(笑)。

単行本が講談社から出たのは1992年。

60名近い作家が並んでいるが、20年以上が過ぎた今、こうして文庫本で読むと、亡くなった方々も多い。

松本清張、吉村昭、森瑤子、吉行淳之介、遠藤周作、井上ひさし、そして山口洋子も・・・・。

でも、この本の中では阿川さんのペンによって、実在している。

人物像も、肉声も、ここにある。

ありがたくて、ちょっと不思議な感じです。

ところで、ってのもヘンだけど、この本のタイトルが、童謡『汽車ぽっぽ』の歌詞「なんだ坂、こんな坂、なんだ坂、こんな坂」からきた、阿川さんお得意の駄ジャレだってことは、ちゃんと通じているのでしょうか(笑)。

この『汽車ぽっぽ』を作詞・作曲した本居長世は、国学者・本居宣長の、直系じゃないけど子孫だったはず。

余談ですが。


BSジャパン「金曜オトナイト」で阿川さんと


ということで、今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

池井戸潤 『銀翼のイカロス』 ダイヤモンド社

佐藤 優 『「知」の読書術』 集英社インターナショナル

北村龍平 『映画監督という生き様』 集英社新書 

小澤征爾 『おわらない音楽~私の履歴書』 日本経済新聞出版社

高須基仁 『慶應医学部の闇』 展望社 

早瀬利之 『石原莞爾 アメリカが一番恐れた軍師』 双葉新書 

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(10月2日号)
  読書欄に掲載されています。