嬉しい復刊です。
林 忠彦 『文士の時代』 (中公文庫)。
朝日新聞社から86年に単行本、88年に文庫本が出ていましたが、増補を加えた新編集版です。
表紙の坂口安吾は、見た記憶をもつ人も多いはず。
銀座のバー「ルパン」での太宰治も、林さんの作品です。
織田作之助を撮っていた林さんに、坂口安吾と並んで飲んでいた酔っ払いが、「おい、俺も撮れよ。織田作ばっかり撮って。俺も撮れよ」と声をかけた。
それが太宰でした。有名なエピソード。
ほかにも川端康成、谷崎潤一郎、志賀直哉、佐藤春夫など、確かに「文士」としか言いようのない佇まいです。
いずれも昭和21年から46年にかけて撮影された写真なので、45年に亡くなった三島由紀夫も見ることができます。
直接、彼らと接してきた林さん。
文士たちについて書かかれた文章がまた、とてもいい。
カメラのレンズを通じて、人物を見抜いてしまうんですね、きっと。
今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。
中山七里 『アポロンの嘲笑』集英社
宮崎 学 『突破者外伝』祥伝社
石川直樹ほか 『宮本常一と写真』平凡社
松田哲夫 『縁もたけなわ』小学館
筑摩書房編集部 『スティーブ・ジョブズ』筑摩書房
* これらの書評は、
発売中の『週刊新潮』(10月16日神無月増大号)
読書欄に掲載されています。