碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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週刊新潮で、「マッサン」の堤真一についてコメント

2014年10月25日 | メディアでのコメント・論評


「堤真一」銭ゲバ役で
NHK「マッサン」に困惑する人

彼が登場すると、主役の玉山鉄二が霞んで見える――。視聴者からそんな声も聞こえてきそうだ。放送第1週の平均視聴率は21・3%。スタートダッシュに成功したNHK朝の連ドラ『マッサン』で、コテコテの大阪商人を演じる堤真一(50)が話題になっている。だが、彼の“怪演”に困惑している人はいないのか。

ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝の成功譚を描く『マッサン』。堤の役柄は鴨居商店社長の鴨居欣次郎だが、そのモデルがサントリーの前身・寿屋創業者の鳥井信治郎であることは一目瞭然だ。

堤の演技について、上智大学の碓井広義教授に話を聞くと、

「玉山さんのマッサンも、シャーロットさんが演じる妻エリーも地味なので、脇から盛り上げていく存在が必要。それが1週目はマッサンの母親役の泉ピン子さんであり、2週目が堤さんになるのです。彼はシリアスな役からユーモラスな役まで幅広く演じることができるので、主役を喰っちゃうくらいでいいと思います」


確かに、堤は日本アカデミー賞最優秀助演男優賞の受賞経験もあり、演技力は折り紙付きだ。その堤が演じる鴨居の初登場は第8回。職場でマッサン夫婦の歓迎会が開かれている最中に堺の桜鯛を片手に突然現れて、エリーに向かいこう言い放つのである。

「こちらの別嬪さんは?」

そう言ったかと思うと、いきなりハグして、

「さすが西洋のレディは、いい香水使ってはるわ」

また、第11回の放送では、マッサンがウイスキーの原価計算をしていないことを知ると、鴨居は畳み掛けるように、

「アホ! スコットランドでは原価なんぼで、売値なんぼや? 金持ちも貧乏人も、みんなウイスキー飲めるんか? やってみなはれ!」

視聴者はこの2話を見ただけで、鴨居が軽薄であると同時に、シブチンな経営者だと感じることは間違いない。ちなみに、“やってみなはれ”は鳥井信治郎の口癖だった。

■社名も烏井の名を

「あれではサントリーの創業者はうるさくて、ちょっと迷惑なおっさんだったということになります」

こう語るのは、コラムニストの林操氏だ。

「NHKの朝ドラでは主人公の良さを引き立てるために、割とエキセントリックな役柄の人を出すことがあります。ですが、カリスマ創業者の鳥井信治郎をあそこまで面白おかしく演じられると、内心は良く思っていないサントリー社員もいるのではないでしょうか」

経済誌記者も苦笑する。

「社名も、ハイボールで有名なトリスも、鳥井さんの苗字をもじっているのは有名な話です。ドラマのことは社内でも話題になっているが、“あれじゃあ、銭ゲバ社長だよ”と戸惑いを隠さない社員も少なくありません」

サントリー広報部に話を聞くと、

「ドラマですのでデフォルメされている部分もあると思いますが、サントリーのウイスキー作りに関心が高まればと思います」

泉下の鳥井も、堤に“やってみなはれ”とは言うはずがない?

(週刊新潮 2014年10月23日号)


・・・・このドラマにおける堤さんは、あれでいいと思います(笑)。

むしろサントリーが気にしそうなのは、デフォルメされた鳥井信治郎のことよりも、今後、マッサンがサントリーを離れて、ニッカを立ち上げていく過程ではないでしょうか。

描き方によっては、「国産ウイスキー」の歴史をめぐる、一種の綱引きが起きるかもしれません。




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