碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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週刊ポストで、「マッサン」の相武紗季についてコメント

2014年10月23日 | メディアでのコメント・論評

朝ドラ『マッサン』
早くも「ピン子以上」のド迫力 
相武紗季の「いびり芸」が怖すぎる

もはや泉ピン子を超えたかもしれない。NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』に「いびり芸」の継承者が現われた。弱冠29歳の相武紗季である。

第13話(10月13日放送)の平均視聴率が関西地区で過去10年間の朝ドラ最高値となる26.2%をマークするなど、引き続き絶好調の『マッサン』。序盤の人気を牽引したのは主人公・亀山政春(玉山鉄二)の母・早苗を演じた泉ピン子の「嫁いびり」だった。

ヒロインのエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)をあの手この手でいじめ抜く鬼姑演技は圧巻だったが、舞台が政春の実家・広島から大阪へと移り、ピン子の登場はしばらくお休み。その穴を埋める働きをしているのが相武だ。

相武が演じるのは政春が勤める住吉酒造の社長令嬢・優子。スコットランドから帰国した政春と結婚する願いが叶わず、青い目の花嫁を逆恨みする。その演技がピン子に勝るとも劣らない。

第11話では、朝食の支度中に「ワタシ、オテツダイサセテクダサ~イ」と申し出るエリーを完全無視。無表情のまま、エリーの味噌汁にだけ醤油をドボドボと流し込んだ。

第12話では「バンゴハン、ツクラセテクダサ~イ」というエリーの申し出を一転して快諾。しかしこれが罠だった。意気揚々とスコットランドの郷土料理を作るエリーの目を盗み、誰もいない台所で一壺分の塩を鍋にぶちまけたのだ。

当然、食卓では皆が「塩辛い!」と悲鳴をあげる。すべてを悟ったエリーにキッと睨まれると、優子は悪びれもせず「仕方ないわ。材料もお台所も違うんやから」とシレッと言い放った。

いびりに気づいた父親(西川きよし)に「(エリーは)たった一人で日本に来てるんやで!」と叱責されても、優子はケロリと一蹴。

「親を捨てる人の気持ちなんてわからへん!」「いつか化けの皮が剥がれるわ。あんたは所詮、親を裏切っても何ともない親不孝もんや!」と返す刀でエリーを罵倒した。

相武のいびり芸には年季が入っている。2009年の『ブザー・ビート』(フジテレビ系)で悪女キャラに開眼すると、2013年の『おトメさん』(テレビ朝日系)では姑(黒木瞳)を裏でイジメ倒す嫁を怪演。現場で「黒木さんと本当に険悪なのでは」と噂が流れたほどだ。

上智大学教授(メディア論)で、朝ドラに詳しい碓井広義氏がいう。

「ピン子さん不在で視聴者にストレスを与える存在がいなくなっていたところにスッポリ収まった。普段の顔がかわいいからこそキッと引きつった表情にドスが利いている。今後もことあるごとに政春とエリーの関係に波風を立てようとするはず。ほんわかした朝ドラをピリッとさせる最高のスパイスになっている」


政春と優子が結婚していたら、ピン子と相武の壮絶な嫁姑バトルが見られたのに……。

(週刊ポスト2014年10月31日号)


・・・・最近の物語進行では、相武さん演じる優子は、すっかり“いいひと”になってしまったようです。

相武スマイルが見られるのは嬉しいが、“いびり芸”が後退してしまうのは惜しいなあ(笑)。