碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

残酷かつエロチックでオーマイガ! NHKドラマ10「さよなら私」

2014年10月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHKドラマ10「さよなら私」を取り上げました。

このドラマ、オトナにとって、結構“見もの”です(笑)。


NHKドラマ10「さよなら私」
残酷かつエロチックでオーマイガ!

もしも自分の妻と浮気相手の女性の心が入れ替わってしまったとしたら。しかも妻と女性が高校の同級生で親友だったとしたら。そして妻が永作博美で、浮気相手が石田ゆり子だったとしたら。NHKドラマ10「さよなら私」はそんなドラマだ。

もちろん永作の夫・藤木直人は、そんなことが起きているとは夢にも思わない。だから、いつものように石田のマンションを訪れ、彼女を抱く。そんな藤木に永作はどんな思いで応えていたのか。残酷かつエロチックな場面だ。見る側(視聴者)は真相を知っているのに、当事者である登場人物は知らない。この図式は物語作りの基本のひとつだ。

2人の心が入れ替わる直前、永作に浮気を追求され、石田が反撃に出た。「してないんだってね、何年も。(微かに笑って)私とはしてるよ、会うたびにね、楽しくセックスしてる」。オーマイガ!

脚本の岡田惠和は、専業主婦・永作と独身の映画プロデューサー・石田を対比させながら、アラフォー女性の建前と本音をじわじわと炙り出す。互いの生活圏を交換した2人が今後どうなるのか、スリリングだ。

神社の石段から転げ落ちて“転換”する設定は、大林宣彦監督の名作「転校生」へのオマージュだろう。またドラマのタイトルからも同作のラストシーンでの小林聡美の声が甦ってくる。2作を見比べてみるのも一興だ。

(日刊ゲンダイ 2014.10.21)