碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「刑事7人」と「七人の刑事」

2015年09月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、ドラマ「刑事7人」について書きました。


テレビ朝日系「刑事7人」
独自色を出すことに腐心しているが・・・

これは一種の戦略商品だったはずだ。目標は、ヒットシリーズ「相棒」とは別タイプの刑事ドラマの創出。差別化のため、独自色を出すことに腐心している。

「相棒」の杉下右京(水谷豊)の武器が優れた推理力と洞察力だとすれば、「刑7」の天樹悠(東山紀之)のそれは“時間”へのこだわりだ。毎回、犯人をはじめとする登場人物たちの“空白の時間”が焦点となる。

この設定自体は悪くない。天樹は、「4分の距離をなぜ15分かけて歩いたか」「自首するまでの2時間半は何をしていたか」といった疑問から解決の糸口を見つけていく。ただ、「これって当たり前の捜査の一環なんじゃないの?」と視聴者に思われてしまうところが辛い。天樹の能力が際立ったものに見えないのだ。

もう一つ残念なのが、他の刑事たちの造形。すぐに怒鳴る熱血漢(高嶋政宏)、空気が読めない帰国子女(倉科カナ)、引きこもりの分析屋(片岡愛之助)など、何とも古くて類型的なのだ。しかも、それぞれがバラバラに自己主張しており、キャラが空回りしている。

このタイトル、やはり昭和の名作「七人の刑事」(TBS系)を連想してしまう。「七刑」の特色は、社会問題も取り込む懐の深さと、刑事たちを悩んだり迷ったりする人間として描いた点にあった。さて、「刑7」はどこを目指すのか。

(日刊ゲンダイ 2015.09.01)