発売中の「サンデー毎日」最新号に、「ヨルタモリ」終了に関する記事が掲載されました。
この中で、解説しています。
「ヨルタモリ」1年で終了の
「引き際の美学」
「引き際の美学」
東京・湯島辺りにあるというバー「ホワイトレインボー」で、宮沢りえをママに、タモリと訪れたゲストでトークを繰り広げる。フジテレビ日曜夜の「ヨルタモリ」が、人気絶頂の中、9月末で終わる。なぜ?
「当初からタモリさんとは『1年だけ』の話で始まったので、円満な契約満了です。もっとも、局は続けてほしい意向でしたが、タモリさんの意志は変わらなかった。今のフジは失敗続きで他に終わらせるべき番組を抱える中、好評な番組を手放すことになり、かなりの痛手です」(フジ局員)
視聴者からも惜しむ声は多く、上智大学の碓井広義教授(メディア論)はその魅力をこう話す。
「毎回、ゲストから他の番組では聞いたことのない話が出てくる。タモリさんだからこそですが、通常のトーク番組とは違い、バーという設定だから、くだけた緩やかな雰囲気にゲストも合わせてくる。日曜の夜に、視聴者がちょっと贅沢な時間を過ごした感じが味わえる番組です」
トークの合間に、コントや即興セッションなどが見られることも、ファンの心をくすぐった。
「タモリがテレビに登場した頃から見ていた人にとっては、原点の『密室芸』に通じるある種の懐かしさがあった。ただ、十分なクオリティを保つには想像以上の時間とエネルギーを要し、手間がかかる。『ヨルタモリ』はタモリにとってフジに対する32年の『笑っていいとも!』への“お礼奉公”。1年やったからこの辺でご勘弁、ということでしょう」
ライターの吉田潮さんは、タモリの「引き際の美学」をみたと言う。
「ズルズルと番組を続ける大物もいる中で、素晴らしいです。タモリには『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)や『ブラタモリ』(NHK)がありますからね」
著書に『タモリ論』がある作家の樋口毅宏さんは、「どうせなら和田誠や筒井康隆、ピアニストの山下洋輔らも出してほしかった。そこはつくずく残念です」
として、こう続ける。
「タモリにとって番組を1年で終わらせることに意味なんてない。何で終わらせるんですかと聞かれても、はぐらかすだけでしょう。『いいとも!』終焉によって王座から降りたのだから、もういいんです。他者だけでなく、自分の肩の力も抜く、煙に巻くのはタモリの生き方なんです」
前出の碓井教授は「一年の約束だった」という番組の終わり方を「フジを傷つけずに別れる一番良い方法」だと言う。
「ただ、タモリにも見限られたフジ、という印象がついてしまった感はある。局のイメージとしても失うものは大きいですね」
“タモリロス”に陥るのは視聴者よりフジ、か――。
(サンデー毎日 2015.09.13号)