北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、大晦日のテレビ番組について書きました。
2015年大晦日のテレビを総括する
紅白は音楽バラエティ?
紅白は音楽バラエティ?
大晦日の夜は、NHK「紅白歌合戦」と民放各局を往復しながら過ごした。まず今回の「紅白」だが、1年を締めくくる音楽番組というより、正体不明の音楽バラエティという印象だった。
目立ったのは内外のヒットコンテンツの援用だ。アニメコーナーが設けられ、民放各局のヒットアニメのテーマ曲が、その映像と共に流された。映画「スター・ウオーズ」の人気キャラクターも出現した。ただし演出が凡庸で、サプライズ感も有難味も希薄だった。先方は公開中の新作のPRになったが、「紅白」にとってこのタイアップはどんな意味があったのか。
そして、「紅白」では珍しくなくなったディズニー・ショーも披露された。ミッキーのキレのいいダンスは見事だったが、年始客獲得を狙う東京ディズニーランドのプロモーションにしか見えなかったのが残念だ。さらに吉永小百合も登場したが、主演映画「母と暮せば」の宣伝とのバーターが明白で、ややがっかりした。
今後は、あらためて音楽番組としての原点に立ち返るのか。それとも、“何でもあり”の音楽バラエティとして喧騒を続けるのか。「紅白歌合戦」という伝統枠そのものについて、根本から検討する必要があることは確かだ。いずれにせよ、午後9時からの2時間45分で十分かもしれない。
一方の民放は、「史上最大の限界バトル KYOKUGEN2015 魔裟斗VS.山本KID徳郁」(TBS―HBC)、「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND―PRIX2015~IZAの舞~」(フジテレビ―UHB)、そして「THE BEST OF WBA世界S.フェザー級タイトルマッチ&WBA世界L.フライ級タイトルマッチ」(テレビ東京―TVH)と、横並びの格闘技が目立った。
もちろん格闘技ファンが一定数存在するのは事実だが、あまり魅力的とも思えない対戦が視聴者の大晦日の気分にマッチしていたのか、熟考すべきだろう。
それ以外の局は、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しスペシャル・絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!」(日本テレビ―STV)、「くりぃむVS林修!年越しクイズサバイバー2015」(テレビ朝日―HTB)といったバラエティだった。固定ファンもいる定番ではあるが、新鮮味に欠けた企画と言わざるを得ない。
どこか1局くらい、「この1年の政治・経済・文化を、分かりやすくまとめて振り返る」といった内容の大晦日特番があってもよかった。
(北海道新聞 2016年01月08日)