碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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東京新聞で、大河ドラマ「真田丸」についてコメント

2016年01月24日 | メディアでのコメント・論評



真田丸 視聴率20%台 好調船出
CG説明、俳優陣・・・「見たくなる仕掛け」効奏

今年のNHK大河ドラマ「真田丸」は、十七日放送の二回目で視聴率が上がって20%台に乗せ、好調なスタートを切った。昨年の「花燃ゆ」が低迷しただけに、TBSのドラマ「半沢直樹」(二〇一三年)で人気を得た堺雅人とヒットメーカーの脚本家・三谷幸喜のタッグで、今後の展開に期待がかかる。 (鈴木学)

タイトルは、堺演じる戦国武将・真田信繁(幸村)が大坂の陣で築いたとりでの名。一族の戦国サバイバルを、荒波にこぎ出す一そうの船に見立てて描く。

「久しぶりに一年ワクワクしながら見られそう」と話すのは、上智大の碓井広義教授(メディア論)。

「信州の小さな一族が、あらん限りの力や知恵で激動の時代をわたっていく姿は、高視聴率を得たTBSドラマ『下町ロケット』(一五年)にも通じるような、判官びいきの日本人の感性を揺さぶるものがある」。三谷脚本は今のところ、心配されたやりすぎ感はなく「ユーモアも抑制が効いている」と高評価だ。

混沌(こんとん)の時代を描くにあたり、コンピューターグラフィックス(CG)などで状況を分かりやすく説明していることも評価。「『花燃ゆ』は歴史上の人物を支えた人を主人公にしたつらさで、誰を追うのか見えなくなっていったが、今回は表舞台に立つ人でそのあたりが明確。ただ、信繁の母親が変に目立ったり、気掛かりな点もある」と話す。


「クスッと笑わせ、泣かせる三谷テイストに加え、信繁らが追い詰められ、もうダメかという場面で助けが入る『待ってました』とばかりのシーンも盛り込んでいる。三谷さんが覚悟を決めて取り組んでいる印象」と、コラムニストのペリー荻野さんは語る。

一、二回では、信繁の父・昌幸役の草刈正雄と、主君・武田勝頼役の平岳大が目を引いたとの評判だ。荻野さんも同感だという。

「武田が滅ぶことはない」と一族の前で言い切った直後のシーンで、息子二人にだけ「武田は滅びるぞ」と告げる昌幸。草刈が幸村を演じたNHKドラマ「真田太平記」(一九八五~八六年)で、丹波哲郎さんが演じた悪賢い昌幸を見るようで「オールドファンには涙もの」とも。子役を使わず少年時代から堺が演じる点は「潔い」と評価する。

キーマンに挙げるのが兄・信幸(大泉洋)だ。後に信繁らと敵味方に分かれ戦う難しい立場で、作品が視聴者に受け入れられるかのカギになるとみている。

「脚本に三谷さんを起用した時点で重厚感のある大河ドラマを求めるのは無理。しかし、しかめ面で演じれば重厚かというとそうではなくて、芯がブレなければ多少のお笑いも許せる。ただし、あまりコメディー色が強いと従来の大河ファンが離れる恐れもある」。辛口な意見も多いコラムニストの桧山珠美さんも及第点のようだ。

戦国武将でも織田信長や徳川家康に比べて知名度に劣るため、戦国に疎い女性らをひきつける取っ掛かりが必要だ、とも。多くのイケメン俳優を使って盛り上げようとした「花燃ゆ」の轍(てつ)を踏まず、信長(吉田鋼太郎)、家康(内野聖陽)ら興味をひくような俳優陣を一話でチラリと見せて、「見たくなる仕掛けをつくっていた」と分析する。

一方で、桧山さんが「描き方がうまくない」と評すのが女性陣だ。信繁の姉に会話で「ねぇ?」と言わせたり、母親のオーバーなリアクションだったり、今後登場するヒロインの描き方も含め「やり過ぎは禁物。何ごともさじ加減が大切」と指摘している。

(東京新聞  2016年1月23日)