「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
桐野夏生 『デンジャラス』
中央公論新社 1728円
素顔の文豪・谷崎潤一郎を描く長編小説。語り手に、谷崎の妻・松子の妹である重子を起用したことが最大の特色だ。『瘋癲老人日記』のモデルにもなった義理の息子の嫁、渡辺千萬子に対する谷崎の入れ込みようが尋常ではない。やがて重子は谷崎と対決することを選ぶ。
森 達也 『不寛容な時代のポピュリズム』
青土社 1836円
安倍政権もトランプ大統領も「民主主義」が生み出したことは事実だ。それを単にポピュリズムと指摘するだけでは何も変わらない。著者はポピュリズム生起のメカニズムを踏まえ、政治から社会現象までを解読していく。「私的ドキュメンタリー史」も刺激的だ。
(週刊新潮 2017.08.03号)