碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「真木よう子ツイッター騒動と視聴率」についてコメント

2017年08月28日 | メディアでのコメント・論評



真木よう子ツイッター騒動の真相と
テレビ界にはびこる視聴率の闇

今週初め、一部マスコミが真木よう子(34)について「女優生命の危機」と報じた一件。その舞台裏が明らかになってきた。

記事の内容はというと、真木が主演ドラマ「セシルのもくろみ」(フジテレビ系、木曜22時)について〈視聴率3.8%。こんなに視聴率が低いから是非、ドラマを見てください〉などと具体的な数字と視聴を誘導するような内容を自身のツイッターに投稿。1時間足らずで削除されたものの、この行為が視聴率調査を行うビデオリサーチ社(以下=ビ社)に対する営業妨害、権利侵害にあたる可能性があり、フジの幹部らがビ社を訪れ、謝罪したというものだった。

ところが、だ。「あの記事は事実誤認です。出向いたのはフジではなく、ビ社側の人間。しかも報じられたつぶやきとは別の内容が問題となり、ビ社が真木サイドに説明しに行った。これがコトの真相です」(事情通)。

その問題視された真木の投稿はすでに削除されているが、こんな内容だったという。

〈あれ?何か「内緒にしといて下さいね」って言われて黒い機器を突然家に置いていかれたけど、これって本当に視聴率に反映しているのか。試したいから明日の10時、フジテレビ付けてみよう。て思う人とそうしてくれよ!てゆう人RT〉

しかもそれに反応し、〈その機器を見たことありまーす!!友達の家にありまーす!!とりあえず言っとけばいい?〉(現在は削除)などと返信するフォロワーも出てきたというのだ。

これはたしかにマズい。思い起こせば2003年、当時、日本テレビのプロデューサーだった人物が視聴率アップを目的とし、ビ社のモニター世帯の割り出しを画策。視聴を承諾した世帯に商品券などを渡して視聴率を買収し、プロデューサー自身も電話で依頼するなどの不正操作が発覚したため大事件となった。事件当時、再発防止として視聴率のあり方を考える諮問機関が設置され、コンマ数%の違いに一喜一憂しないよう業界内外に広く啓発するなどの提言がなされたが、あれから14年。今回の件ひとつとっても視聴率の問題は改善されたとは言い難い。

民放は企業からのCM出稿料が自分たちの飯のタネとなる。大事な出稿料の価格を決める視聴率の信憑性が揺らぐような事態はあってはならないが、そもそも視聴率は標本誤差があるデータ。調査対象世帯数900世帯で視聴率10%だった場合、プラスマイナス2.0%の誤差があるとされているのだ。

上智大教授の碓井広義氏(メディア文化論)はこう言う。

「視聴率の中でもリアルタイム視聴は番組そのものの存続を左右しかねない数字として重視されていますが、そもそもザックリと算出されたものであることが広く周知される必要があるように思います。その動向に出演者が振り回され、主演女優がひとり矢面に立つような状況は非常事態ともいえる。業界全体が本気で旧態依然としたシステムを見直す時期が来ているのではないでしょうか」


数字がすべてじゃないことは分かっているだけに、根が深い問題である。

(日刊ゲンダイ 2017.08.26)