碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「座長」窪田正孝の当たり役 『ラジエーションハウス』

2019年05月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



「ラジエーションハウス

~放射線科の診断レポート~」

「座長」窪田正孝の当たり役

ネタは出尽くしたかに見える医療ドラマだが、新機軸の登場だ。「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)の主人公、五十嵐唯織(窪田正孝)は放射線技師である。

患者の写真を見て診断を下すのは、あくまでも放射線科医の領分。医師の中には「技師のくせに」などと見下す者もいる。だが、実は彼らこそが医療の現場を支えている、というのがこのドラマだ。

大きな見どころは初の月9主演となる窪田だ。一昨年のNHK土曜ドラマ「4号警備」では、元警察官で警備員という鬱屈を抱えた青年を巧みに演じていた。

また昨年の「アンナチュラル」(TBS系)では、不自然死を解明する活動と週刊誌に情報を流すスパイの役割との間で揺れ動く医学生を好演していた。

今回はさらに進化した窪田が見られる。医師免許を持っていることを隠しながら、技師という仕事と真摯に向き合う五十嵐。一匹狼的な存在から、チームの仲間と一緒に医療に取り組む姿勢へと変わってきた。

それは同僚である羽黒たまき(山口紗弥加)や広瀬裕乃(広瀬アリス)たちにも良い影響を与えている。さらに、初恋の相手でもある放射線科医、甘春杏(本田翼)との縮まらない関係も微笑ましい。

ひょうひょうとしていながら、大事な場面で能力を発揮する五十嵐は、「座長としての窪田正孝」の当たり役となりそうだ。

(日刊ゲンダイ 2019.05.22)