碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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これまでが〈序章〉かもしれない「フジテレビ問題」

2025年01月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

これまでが〈序章〉かもしれない

「フジテレビ問題」

 

患部が露呈した「記者会見」

一連の「フジテレビ問題」の患部が一気に露呈したのが、1月17日の記者会見です。

フジ上層部は、自分たちが置かれた危機的な状況が分かっていないのではないかと感じさせる会見でした。

その会見のやり方や港浩一社長の発言も問題でした。まず、会見では、他の報道機関に対して、さまざまな制限をかけていたこと。

そもそもテレビという映像を使った報道機関にもかかわらず、映像をシャットアウトするなど、本来ではありえないことが起きました。

報道機関としては、他の企業などでの不祥事が起きたときにはカメラを持ちこんで伝えているわけです。

しかし、今回は自分たちにカメラが向けられるとそれを遮断しようとした。つまり、報道機関としての姿勢そのものが問われる、大きな勘違いをしていることまでが明るみになりました。

メディアを制限し、何を聞かれても『調査委員会にゆだる』と繰り返すばかりで、報道機関としての役割を自ら放棄してしまった17日の会見。

フジには検証能力も自浄能力もないと言っているようなものです。こんな会見なら、やらないほうがマシだったかもしれません。

また、阪神・淡路大震災から30年という節目の17日に会見をぶつけてきたことにも違和感を覚えました。

この日にメディアが報じなければならないことはたくさんある。それでフジの問題の扱いが小さくなるという計算があったとすれば言語道断です。

スポンサー企業からの「NO!」

スポンサー企業が離れて初めて重大さに気づき、フジ上層部が慌てているのが現状です。

不祥事発覚などで企業側が個別の番組のスポンサーを降りることはありますが、今回のようにフジテレビという放送局そのものに対して『NO!』を突きつけたのは「前代未聞」です。

フジでCMを流すことが自社のイメージを毀損(きそん)すると判断したナショナルクライアントが、いち早く手を引いた。この流れは止まらず、多くの企業も追随することになりました。

トラブルを把握した時点で、同局が動かなかったということが大きな問題です。これはもう「隠蔽した」と捉えられてもおかしくない動きをしているわけです。

それについて、第三者機関によってきちんと調べたり、事実を確認したりすることが一切なく、まるで何事もなかったかのようにそのままやってきた。

中居さんをめぐる「問題案件」は、確かに正確なことはまだ出てきていませんけれども、伝えられていることから判断しても、大きな人権侵害が起きていたことは少なくともわかります。

ですが、中居さんという人気タレントを守るため、番組や自分たちの会社を守ることで被害者へのケアではなく、問題をすべて押し込めてしまった。

乱暴な言い方をすれば放送局の、テレビ局としての「自滅行為」のような振る舞いだったと思います。

「対症療法」では乗り切れない

昨年末の週刊誌報道があった時点で、第三者機関による調査を行い、それを踏まえて記者会見を開いていれば、こんな形の騒動には発展していなかったかもしれません。

しかも、フジテレビの動きを見ていると、対症療法というか…目の前で起きたトラブルを単に防いでいる感じがします。

問題の根本的な部分を理解しないままに、目の前の攻撃をひとつづつかわすことに注力している。問題を誤魔化したい、隠したいという姿勢が続いているように思います。

27日(月)に行われるという新たな会見が、こうした様々な疑問や指摘にきちんと答えるものでないと、フジテレビの存続にかかわる危機はますます回避できなくなるでしょう。