「週刊新潮」に寄稿した書評です。
そのニュース、どこまでフェイク?
山田圭一
『フェイクニュースを哲学する 何を信じるべきか』
岩波新書 990円
今やすっかり日常的な言葉となった「フェイクニュース」。2016年のアメリカ大統領選挙をきっかけに広がった印象がある。トランプ前大統領が、自分にとって都合の悪い報道や不都合な事実に反撃する形で多用していたからだ。
山田圭一『フェイクニュースを哲学する 何を信じるべきか』は、フェイクニュースをテーマとすることで、何かを「知る」こと、そして「信じる」ことの意味を探る一冊である。
ニュースは他人から伝わってくる情報だ。では、他人が言うことはどこまで信じていいのか。流れてくるうわさは信じてはならないものなのか。著者はネット空間とリアル社会を比較しながら検討していく。
またフェイクニュースか否かを判別する際、専門家の意見やマスメディアの伝える内容を参考にする人は少なくない。だが、その信頼性自体はどう担保されているのか、いないのか。
さらに「陰謀論」についても、それは「信じてはいけないものだろうか」という意外な問いを立てて検証する。
このように、本書に何度も登場するのが、「しかし、本当にそうだろうか」といったフレーズだ。常識や当たり前と思っていることも、あえて疑ってみたり、別の側面から考察してみたりすることで問題の本質がより明確になっていく。
フェイクニュースへの対応として著者が重要視するのは、「ネット上の証言がなされる状況に応じて信頼性を評価する知的な自律性」を持つことである。
(週刊新潮 2024.10.31号)