「週刊新潮」に寄稿した書評です。
西崎伸彦
『バブル兄弟~〝五輪を喰った兄〟高橋治之と〝長銀を潰した弟〟高橋治則』
文藝春秋 2310円
3年前、東京五輪をめぐる受託収賄容疑で逮捕された高橋治之は現在も裁判闘争中だ。30年前、二信組をめぐる背任容疑で逮捕された弟の治則は裁判闘争中に急死した。スポーツビジネスの世界で、義理と人情とコネで成り立つビジネスモデルを構築した兄。リゾート王と呼ばれ、肥大化する虚像と実像との間で揺れた弟。栄光と挫折に生きた兄弟は、いかにして昭和のアンチヒーローとなったのか。
「東京かわら版」編集部:編
『落語家の本音~日本で唯一の演芸専門誌が50年かけて集めたここだけの話』
朝日新聞出版 2970円
「東京かわら版」は落語・講談・浪曲を中心とした情報誌。創刊50年を記念して編まれたのが本書だ。立川志の輔や春風亭昇太などのインタビューも興味深いが、昭和の名人たちの話は一層刺激的だ。「落語の生命は軽さにあるんです」と金原亭馬生。落語は「生きてる人間のものを生きてる人間が感じる」ことだと言うのは桂文治。他に古今亭志ん朝や立川談志の〝ここだけの話〟も貴重だ。
(週刊新潮 2025.02.13号)