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舞台『その男』を観た。
池袋の東京芸術劇場に着いた途端、ロビーで、「真実ちゃん」こと女優の熊谷真実さんに会う。着物姿だった。
以前、紀行番組に出演してもらったが、会うのは本当に久しぶり。ロケで行った各地の話で盛り上がるうちに、1ベルが鳴った。
さて、『その男』だ。
池波正太郎さんの原作、「ラッパ屋」の鈴木聡さんの脚本、ラサール石井さんの演出、そして主演が上川隆也さん。
いいメンバーだ。
幕末から昭和までを生き抜いた、一人の男の物語。
激動の時代の中で、主人公の虎之助(上川)は、“流れ”に飛び込むのではなく、その流れを見つめながら生きることを貫く。
剣の戦いがあり、恋があり、笑いがあり、涙もあり、という舞台で、休憩が2度入る長丁場でありながら、飽きることもない。
素直に楽しんだ。
上川さんは、相変わらずの“舞台映え”だった。自分自身を、シリアスにもコミカルにも操ることができる技は見事。
そして、虎之助の師匠・池本茂兵衛を演じる平幹二朗さんの圧倒的な存在感。舞台に出てくるだけで、明らかに空気が変わるのだ。
鈴木さんの脚本は、長い物語を、場面転換を多用することでテンポよくさばいていた。
ラサールさんの演出は、芝居のメリハリをつけながら観客を引っ張っていた。
そうそう、よく知る「ラッパ屋」の面々が出ていたのも嬉しい。かわら版屋の福本伸一さん、和尚の木村靖司さん、遊女の弘中麻紀さんなどだ。
舞台が終わって、芸術劇場前の広場でやっていた「池袋古本市」。
その後は巨大書店の池袋ジュンク堂。
それぞれで“収穫”もあり、満足の池袋行きでした。